最新記事
新型コロナウイルス

新型コロナに「脳が壊死」する合併症の可能性

Woman with COVID-19 May Have Developed Rare Brain Disease

2020年4月3日(金)14時45分
カシュミラ・ガンダー

下の地図で示したとおり、新型コロナウイルスの感染は世界のほとんどの国と地域に広がっている。米ジョンズ・ホプキンズ大学の2日時点のまとめによると、全世界で約100万人の感染が確認され、4万7522人が死亡している。一方で少なくとも19万5929人の症状が回復している。米疾病予防管理センター(CDC)によると、新型コロナの一般的な症状は、発熱、咳、息苦しさなどだ。

corona0403-image.png

英ブリストル大学臨床神経科学研究所のニール・スコールディング教授は、今回の症例報告について、「新型コロナに関連した深刻な脳の炎症の初めての症例で、非常に重要だ。我々はこの種の炎症が起こるのではないかと危惧していた。まれにではあるが、通常のインフルエンザやその他のウイルスの感染症で実際に発生しているからだ」と話している。

さらに、今回の症例が「医療従事者にこの合併症を気付かさせる重要な役割を果たす」と述べている。

またこうした合併症のリスクが高い患者についてスコールディングは、「誰がこのような合併症になりやすいかは分からない。インフルエンザでは子供がこうした合併症になりやすいが、新型コロナでは子供は抵抗力があるようだ。さらに今回の症例は成人女性だ」と話している。

そして「比較的にまれな合併症であることに変わりはない。このため一般の人がパニック状態などの神経症状に日常的に注意を払う必要はないだろう」と見ている。

神経症状の患者に高リスク

一方で英ノッティンガム大学クイーンズメディカルセンターのクリス・コンスタンティネスク教授は、今回の症例によって新型コロナが脳に損傷を与える可能性があることがさらにはっきりした、と指摘する。

「脳症が直接ウイルスによるものかどうかは不明」だが、神経症状が新型コロナの症状の可能性があるかもしれないと注意することは「重要」だと、コンスタンティネスクは言う。「多発性硬化症や重症筋無力症といった免疫抑制が必要な病気の患者は、感染のリスクが高く、免疫機能を抑えられている(重症化の可能性がある)ので注意が必要だ」

新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、「脳症などの合併症が次第に明らかになりつつあり、同時に現在、脳疾患を抱えている患者の感染の危険性も見えてきた。今回が例えまれな症例であっても、情報としての重要性は高い」とコンスタンティネスクは話している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米PPI、8月前月比-0.1% サービス低下で予想

ワールド

高速道路インフラに不正無線か、米当局が検査指示 中

ワールド

ネパール首都は明朝まで外出禁止、市街を兵士巡回 死

ワールド

米政権のワクチン政策、科学的根拠「ある」24%にと
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題」』に書かれている実態
  • 3
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 4
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 6
    カップルに背後から突進...巨大動物「まさかの不意打…
  • 7
    毎朝10回スクワットで恋も人生も変わる――和田秀樹流…
  • 8
    富裕層のトランプ離れが加速──関税政策で支持率が最…
  • 9
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 10
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 6
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 9
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中