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中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?

2020年3月18日(水)18時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そこで鍾南山のアドバイスと提言を最大限に活用しながら、「それはこの俺が決意し断行したことだ」と「他人の業績を自分のものとして自慢している(摘桃子)」わけだ。

この「他人の業績」の「他人」は李克強だろうと思われがちだが、これは2月10日の<新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?>に書いたように、習近平がミャンマー訪問や雲南の春節巡りなどをしていたために李克強が北京にいて「留守を守っていた」だけであって、李克強自身に功績があったというわけではない。中国人民の命を守るために貴重なアドバイスをし続けたのは鍾南山で、鍾南山は国家衛生健康委員会が「ハイレベル専門家チーム(専家組)」のトップ(組長)で、国家衛生健康委員会を管轄しているのは孫春蘭国務院副総理で、その上司が李克強(国務院総理)だという流れ図にあるだけのことである。

おまけに李克強は「新型コロナウイルス肺炎防御抑制領導小組(指導グループ)」の組長(トップ)なので、鍾南山は李克強の指導グループにも常に参考意見を具申する立場にあり、習近平に直接話をするのは職位の順番から言って、あくまでも李克強である。

但し、中国で最高レベルを保つ人民解放軍の医療部隊は、習近平が司る中央軍事委員会を通して、その系列から派遣されている。

任務を終え撤退

<欧州などに医療支援隊を派遣する習近平の狙い:5Gなどとバーター>に書いたように、方艙医院は3月14日には役割を終えて閉鎖され、また全国から集まった医療支援部隊は、3月18日に最後のチームが撤退し、武漢はコロナ発生前の医療体制に戻った。

3月16日現在で、まだ病院に残っている患者数は中国全土で8,976人で、治癒して退院した患者数は68,679人。それも病院で治癒したと診断された後に、さらに2週間は隔離するという手法を取っているので、今では再感染はほぼいなくなっている。そのシステムを作ったのも鍾南山だ。

海外からの「逆輸入」

いま問題になっているのは、欧州など海外の感染率が高いために、それまで中国から逃れていた海外移動者たちが中国に戻り始めたという「逆輸入」現象が起き始めていることである。数日前までに新規感染者数が中国全土で1桁にまで減って、これで中国は完全に「脱コロナ化」ができたと胸を張っていたのだが、一昨日辺りから突然「帰国者による再拡大」現象が起き始めている。

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