最新記事

ドイツ

ドイツ保健省、最悪の場合ロックダウン2年の可能性も

2020年3月18日(水)18時00分
モーゲンスタン陽子

ドイツ-ポーランド国境で体温チェックが行われている...... REUTERS/Axel Schmidt

<ドイツ保健省は、増え続ける感染者に危険度指定を高め、「極端な場合」には各種制限の一部が2年間続くこともありうると示唆した......>

17日、ドイツ保健省のロベルト・コッホ研究所(RKI)は、同国における新型コロナウイルスの危険度を中から高に引き上げた。増え続ける感染者・死者数と、既存の医療機関での対応能力に陰りが出てきたためだ。

パンデミック収拾まで2年を要する可能性もあると予想され、そのため「極端な場合」には現在導入されている各種制限の一部が同期間続くこともありうると示唆した。

また同日、EU首脳陣はEU圏外から圏内への移動を30日間禁止することに合意した。EU市民はこれに該当しない。ドイツのハイコ・マース外務大臣はドイツ人の本国送還に5千万ユーロを費やすと発表した。

17日現在、ドイツの感染者は8200名以上、死者は26名になる。

外出禁止令はないが事実上ロックダウン

ドイツでは16日からほとんどの州で、学校や幼稚園がイースター休暇終了の4月19日まで、5週間閉鎖となっている。それ以前に自主閉鎖を発表した施設もあるが、17日からは美術館、映画館、スポーツ施設、コンサートホール、クラブ、バー、動物園、公衆浴場、観光施設などが営業停止、さらに公園など子供の遊び場も使用禁止になった。各種イベントも禁止される。

18日からは飲食店の営業時間を午前6時から午後3時までに制限。テーブルの間隔は最低1.5メートル以上確保し、かつ入店は最大30人までという条件付きだ。3時以降は、テイクアウトもしくは配達のみ可能となる。

スーパーや薬局、ガソリンスタンドや銀行など、生活必需品やサービスを扱う施設は営業可能だが、平日は午後10時まで、またふだんは営業禁止の日曜も12時から6時までオープンと、逆に営業時間が延びている。必要な物資にいつでもアクセスできるようにとのことだが、営業時間を伸ばすことによって客の集中を分散させることもできるだろう。

ドイツは周辺5カ国との国境も閉鎖した。国内でも、緊急の場合以外の旅行は奨励されていない。ホテルの宿泊も制限されるため、実質、用もなく他都市に移動することは不可能となった。また、フランスなど周辺諸国でも入国制限や国境閉鎖を行っているため、他国からドイツに戻りたくてもなかなか戻れないドイツ人も多い。EU全土が閉鎖されることになったが、希望するドイツ人は航空機で連れ戻すようだ。

医療用マスク5万点盗難

17日現在、ドイツではおよそ500人が病院で治療を受けているが、その数は数日中に3倍以上になると予想されている。

食料、消毒液、トイレットペーパーなどは国内に十分にあり、不要な買いだめをしないよう政府が呼びかけてはいるものの、スーパーなどでは品薄の状態が続いている。欧州委員会は先日、マスクなどの医療物資を加盟国でシェアし、困窮する国のないよう互いに助け合うことを提案した。だが16日にはケルンで、医療施設のために保管されていたマスク5万点が倉庫から盗まれる事件があった。同様の事件は今月に入ってからドイツ全国で起こっているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中