最新記事

アメリカ社会

人気の大統領だったのにオバマの命名運動が振るわない理由

THE PRESIDENTIAL NAMING GAME

2020年3月4日(水)18時10分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

オバマ自身が歴史に名を残すことに関心があるのかは不明(オバマ財団や元側近に電話やメールで問い合わせても返事はなかった)で、それも問題の一部かもしれない。彼は退任後は驚くほど目立たず、公の場で発言したり自分の成果をトランプが台無しにしていることを嘆くこともまれだ。回顧録もまだ出版していない(妻ミシェルの回顧録はベストセラーとなった)。

45万人が署名したケースも

レガシーほったらかしで裕福な友人とくつろぐオバマに、民主党内にはいら立ちもある。「あまり厳しいことは言いたくないが、退任後のバラクは(ヴァージン・グループの創業者)リチャード・ブランソンと交遊し、ジミー・カーターではなくジェラルド・フォード流の生き方をしている」と、ギャローは言う。

ステットソン大学のスペリスキーも、オバマ陣営が大統領選で見せた賢明で効果的なブランド構築が「就任後は下火になった」と指摘する。

それでも命名運動は続いた。2017年にはミシシッピ州で南部連合の「大統領」ジェファーソン・デービスにちなんで名付けられた学校がオバマにちなんで改名され、2018年にはバージニア州リッチモンドのJ・E・B・スチュアート小学校が、南北戦争で奴隷制を支持した人物の名前を嫌い、オバマ小学校と改名した。

オバマの名前が持つ公正さに起死回生を懸けるケースもある。例えばデトロイトのチャータースクール(特別認可学校)「トンブクトゥ・アカデミー」は2019年夏、バラク・オバマ・リーダーシップ・アカデミーと名を変えた。「改名すれば理念が一新し、学業成績向上のチャンスにもなると思った」と、創立者のバーナード・パーカーは言う。

命名をめぐる支持者のうねりはたまに起きる。政治サイト「ムーブオン・ドット・オルグ」の請願は45万人を超える署名を集め、現大統領を挑発するためだけに5番街のトランプ・タワー前の一画をバラク・H・オバマ街に改名するようニューヨーク市に要求した。だが市は断固拒否。特にニューヨークの民主党指導者たちはオバマのレガシーにはそぐわない動きだと感じている。「オバマ夫妻は品格、公務への献身、大統領職への敬意の象徴」だと、同市議会のコーリー・ジョンソン議長は2019年8月に語った。

一方、生まれ故郷ハワイではサンディ・ビーチの一件以降、政治家たちが他の案を検討してきた。空港、生誕記念式典、オバマが母の遺灰をまいた海を見下ろす展望台......。それでもまだオバマの名を冠した場所はない。オバマへの賛辞に最も近いのは、レモン、ライム、チェリー、パッショングアバのシロップをかけたかき氷「スノーバマ」。本人も大統領時代の休暇中に味わっている。

だが、チャンは諦めていない。今年1月には州議会の上院議員として、オバマが祖母と暮らしたアパートや夏にアルバイトをしたアイスクリーム店などオバマゆかりの場所に史跡案内を設ける法案を提出した。

「ハワイを訪れる人々と地元住民にとってオバマゆかりの場所を見る好機になるはず。法案が通過し、オバマが育った場所だと一目で分かる記念碑ができることを願っている」

<本誌2020年3月10日号掲載>

【参考記事】オバマは「民主党のレーガン」!?(池上彰)
【参考記事】オバマからトランプへ、米政治の「退化論」(パックン)

20200310issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油大手幹部、エネ市場動揺悪化の公算大と政権に警

ワールド

再送-トランプ氏、イランと接触と発言 交渉には懐疑

ワールド

トランプ氏、ホルムズ海峡警備で協力要求 「7カ国と

ワールド

英首相、ホルムズ海峡巡りトランプ氏と協議 カナダ首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 6
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 7
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中