コラム

オバマは「民主党のレーガン」!?

2012年10月14日(日)00時33分

 現在アメリカ大統領選挙取材のためにアメリカに長期滞在中ですが、一時帰国して、日本版の最新版を手にしました。10月17日号です。

 ここで目についたのが、『「嫌われオバマ」2期目のシナリオ』の記事です。これは、アメリカ本国版では前の号に掲載されていました。本国版を読んだときは驚きましたね。なにせタイトルが「WELCOME BACK TO THE WHITE HOUSE, MR.PRESIDENT」だったのですから。「大統領、ホワイトハウスにお帰りなさい」つまり、オバマが再選されたかのようなタイトルだからです。

 本誌はオバマ再選を予想しているのか、熱望しているのか、と思わせるタイトルです。

 本文を読むと、オバマ勝利を確信しているというより、もし再選を果たせば、オバマは「民主党のレーガン」になれる、というものでした。

 これは、なかなか言い得て妙ですね。かつての共和党大統領だったロナルド・レーガンは、1期目は「試行錯誤の連続」で、支持率低下に苦しんだが、2期目は大きな成果を上げた。「オバマの1期目はレーガンのそれととても似ている」「あと4年の時間があれば、オバマはもっと先まで行ける」というわけです。

 この記事の最後には、次のような文章が来ます。「オバマの改革は、これから収穫の時期を迎える。経済の回復が追い風になるだろう」、「オバマと一緒に、私たちも収穫の時期を迎えようではないか」。

 なんだ、やっぱりオバマ再選を熱望しているのですね。

 この週の号は、これだけではありません。『ロムニーの2つの顔どっちが本当か』の記事は、ロムニーに厳しいトーンだし、『保守系メディアは空騒ぎがお好き』は、オバマを批判する保守系メディアを批判しています。
 
 うーむ、やっぱり「ニューズウィーク」はオバマが好きなのですね。

 でも、最近の共和党の政策の支離滅裂ぶりやロムニーのカメレオンのような発言の変化、嘘をまぶしたライアン副大統領候補の演説を見ていると、ニューズウィークの気持ちがわかります。

 それでも、最近の世論調査では、オバマとロムニーの支持率は拮抗し、なかにはロムニーがオバマを上回った数字も出ています。

 冷静に分析すればオバマが優れているのでしょうが、優れていれば大統領になれるというわけではないことは、ジョージ・W・ブッシュ大統領の当選を見れば明らか。

 さて、どうなるのでしょうか。急激に寒くなってきたニューヨークに戻って観察を続けることにします。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米政策金利、FFよりレポ翌日物が妥当 ダラス連銀論

ワールド

トランプ氏は「酒依存症のような性格」、米誌インタビ

ビジネス

家計の金融資産、9月末は2286兆円で最高更新 株

ワールド

タイ政府、カンボジアに足止めの自国民の帰国手配 最
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story