最新記事

アメリカ政治

トランプ政権発足から2年、守った公約、守っていない公約

Donald Trump at Two Years: Promises Made, Kept, Broken

2019年1月21日(月)17時30分
ジェシカ・クウォン

「公約はなされ、公約は守られた」の看板と支持者を背にしたトランプ(2018年10月27日、イリノイ州)

<自分は「有言実行の男」とアピールするトランプだが、絵に描いた餅に終わった公約もある>

ドナルド・トランプ米大統領は昨年の中間選挙用の遊説で、「公約はなされ、公約は守られた」というスローガンを唱えていた。1月20日で大統領就任から丸2年、トランプはたしかに公約の一部は守ったが、実現できなかったものも少なくない。

つい先週もトランプは、自分は約束した通りに事を運んでいると主張した。

「政治家たちは過去何十年も、国境を守るとか、貿易協定をやり直すとか、海外に出て行った工場を呼び戻すとか、中国に強硬姿勢を取るとか、大使館をエルサレムに移すとか、NATOに公平な負担を求めるとか、たくさんの公約をしてきたが、結局は1つとして実行されなかった(もしくはもっとひどくなった)」とトランプはツイッターで述べた。

そしてこう締めくくった。「私はやると誓ったことをやるべく、われらが偉大な国家の国民によって選ばれた。約束通り私はあなたがたのために戦っている!」

だがトランプが言及したのは進捗がみられる公約ばかり。以下では彼が選挙で公約した重要な政治課題の一部がどうなったか見てみよう。

国境の壁を負担ゼロで作る

2015年6月の大統領選への出馬表明演説でトランプはこう言った。「私は偉大な壁を作るだろう。私よりうまく壁を作れる人間はいない。信じて欲しい。それに私なら非常に安い費用で壁を作る。偉大な、偉大な壁をアメリカの南の国境に作り、壁の費用はメキシコに払わせるつもりだ」

しかし最近は「(メキシコが壁の建設のために)小切手を切るだろう」と言ったわけではないと修正している。ちなみにメキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領は2017年、壁の費用は払わないと明言済み。

トランプは今、壁の建設費用として57億ドルの予算を議会に要求している。民主党はこれを拒否、代わりに国境警備の予算としてはるかに低い金額を提示している。対立は長引き、アメリカ史上、最長となる政府機関の閉鎖が続いているが、壁ができる目途はまだ立たない。

<参考記事>米政府閉鎖で一カ月近く無給の連邦職員、食料配給に殺到

米中貿易戦争は休戦中だが

トランプは北米自由貿易協定(NAFTA)を「災厄」だと批判し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については「さらに悪くなるだろうから抜けるつもりだ」と述べた。また、貿易赤字の問題では中国に強い態度で臨むとしていた。

TPPについては公約通り、就任後数日で離脱した。NAFTAに代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の交渉を行い、11月には署名にこぎつけた(発効に必要な議会の承認はこれから)。

一方で、中国に関する公約はいまだに実現していない。現状は、貿易赤字の是正どころか互いの国の産品に追加関税をかけ合う貿易戦争の様相だ。両国は12月に90日間の「停戦」で合意、一時的に戦いは中断しているが、その先の展望はまだない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、11月は48.2に低下 9

ワールド

ウクライナ、和平案巡り欧州と協議 ゼレンスキー氏が

ビジネス

米、英の医薬品関税をゼロに NHS支出増と新薬価格

ビジネス

インタビュー:USスチール、28年実力利益2500
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中