最新記事

女性問題

韓国史上初の「メガネアナ」、今度は朝のニュースで「ノーブラ・チャレンジ」

2020年3月3日(火)20時50分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20200303_205449.jpg

イム・ヒョンジュ・アナ(中央)がノーブラで出演した朝のニュース番組。なんと、左隣りの男性アナの方はブラを着けている。MBClife / YouTube

ブラは女性抑圧の象徴?

さて、これまでにも、女性がブラジャーを使って抗議した事例は数多くあった。始まりは、1968年にアメリカで行われた「ミスアメリカ大会」反対運動。200人ほど集まった女性を中心としたデモ隊は、デモンストレーションとして「Freedom Trash Can(自由のゴミ箱)」を用意し、そこへ女性の象徴であるとされるスカートやつけまつげ、下着を投げ捨てた。さらにブラジャーを集め、そこで焼いてみせ、女性の性の商品化ともいえるミスコン開催に抗議したのだ。

その頃から、ブラジャーは女性の体を締め付けるコルセットと同様に、下着でありながら女性への抑制を象徴するものとして度々取り上げられてきた。最近でいえば、昨年6月にスイスで行われた「男女平等賃金とセクハラ撲滅を求めるデモ」では、数千人にも上る女性が集まり道路を1日封鎖するデモが行われたが、そこでもデモ隊によって路上でブラが焼かれるパフォーマンスが敢行されている。

今回、イム・ヒョンジュさんがノーブラにチャレンジしたのは、大々的な男女差別や雇用均等を掲げて行ったわけではない。むしろ眼鏡をかけて出演したときと同様、「自分の体は自分のものだ。なぜ女性という理由だけで好きなように着脱の選択ができないのか?」というささやかな疑問をただ実行しただけだ。

しかし、ノーブラでの生放送出演が世間に知られるようになると、ネット上で「ブラはするもしないも女性個人の自由」という意見と「目のやり場に困る、相手が困ることも考えろ。社会的マナーだ」という意見が対立。イム・ヒョンジュさんに向けられた誹謗中傷の書き込みは未だ続いている。

自殺したソルリさんもノーブラでバッシング

韓国では、誹謗中傷による有名人へのダメージについて度々問題視されてきたが、昨年10月に亡くなったアイドルグループ f(x) の元メンバーであるソルリさんの自殺が記憶に新しい。彼女も、自身のSNSにブラジャーを付けない姿を何度か投稿し、ひどい誹謗中傷を書き込まれていた。他にも様々な批判が浴びせられ、鬱状態にまで追いこみ、最終的には彼女は自ら命を絶つ結果となってしまった。

イム・ヒョンジュさんは、インタビューなどで「(悪質な書き込みについて)気にしていない」と語っていたが、あまりのひどさに法的措置も辞さないと発表せざるを得ない状態になった。アンチコメントを今まさに書こうとしている人は、いったん手を止めて、そのひと言がきっかけで彼女を追いこんでしまうかもしれないことを考え直してほしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中