最新記事

新型コロナウイルス

「アメリカの医療システムは新型コロナの津波に呑み込まれる」(ニューヨーク州知事)

New York Governor Warns Health Care System Will Be Overwhelmed By COVID-19

2020年3月17日(火)17時30分
ジェイソン・レモン

新型コロナ対策について記者会見をしたニューヨークのクオモ州知事(中央、3月2日)  Andrew Kelly- REUTERS

<新型コロナウイルスに対する備えが最も脆弱なのは、これから感染拡大を迎えるアメリカかもしれない。医療崩壊が迫っているとの訴えにも、トランプはやる気なし>

米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は3月16日、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)により、アメリカで「医療崩壊」が起こる可能性があると警告した。ウイルスの感染拡大で「大惨事が迫っている」可能性があり、この問題を緩和するための「対策強化」を連邦政府に求めた。

ニューヨークは州も市もすでに非常事態を宣言し、ニューヨーク市ではすべての学校、レストラン、バー、クラブに閉鎖命令が出されている。3月16日朝にCNNのインタビューに応えたクオモは、アメリカの医療システムは、新型コロナウイルスを迎え撃つには圧倒的に力不足だと訴えた。裕福なニューヨーク州でさえ、集中治療室もベッドも病院そのものが足りない、今後数週間で新たな病院を建設するリソースもない。今ある病院に、詰め込めるだけベッドを詰め込むしかない、そんな状況だという。クオモは、アメリカ陸軍の工兵部隊の出動が必要だとも言っている。

「アメリカは新型コロナウイルスの対応で出遅れた」と、クオモは言う。「中国で昨年11月に新型コロナウイルスが発生したことはわかっていたのに、今になって虚を突かれ、後手後手に回っている」

「新型コロナウイルスの脅威は、われわれの医療システムを圧倒している。医療崩壊が起きるだろう」と、クオモは述べた。「連邦政府は取り組みを強化しなくてはならない」「私たちの前には大惨事が迫っている。病院システムに感染拡大の津波が押し寄せれば、われわれは対処できない」

検査キットが足りない?

アメリカではニューヨーク州に限らず多くの州が非常事態を宣言している。ドナルド・トランプ米大統領も3月13日に国家非常事態を宣言した。だがアメリカは、いまだに新型ウイルスの検査キットも満足にそろえることができず、いったい感染者がどこにどのくらいいるかを把握するのにも程遠いありさまだ。

アメリカ全体でこれまでに感染が確認されたケースは約4500人だが、実際の感染者数はそれよりはるかに多いと専門家は見ている。たとえばオハイオ州当局は3月12日、感染者数は同州だけでも10万人を超えるという見解を明らかにした。

トランプの新型ウイルス対応は、保健当局や科学者、民主党議員などからの激しい批判にさらされている。問題の発生当初に「ウイルスなど民主党のデマだ」「こんなものはすぐに消えてなくなる」など、新型コロナウイルスの脅威を過少評価し、対策を取ろうとしなかったためだ。クルーズ船「グランド・プリンセス」で感染者が出た際には、乗客をカリフォルニア州沖に停泊させた船内に引き留めて、アメリカでの感染者数が実際よりも少なく見えるようにしたいと語っていた。

<参考記事>新型コロナ「不都合な真実」をあなたは受け入れられるか
<参考記事>トランプ、ドイツ社のワクチン独占を画策?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テマセク、運用資産が過去最高 米国リスクは峠越えた

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中