1年延期の東京五輪、組織委理事1人に約9億円 汚職疑惑の人物にロビー活動も
IOCは「自らも犠牲者」
JOCは外部の専門家による調査チームを発足させ、2016年8月に調査報告書を公表、招致委による契約内容や締結過程について国内の法律に違反することはないと結論づけた。 同報告書は高橋氏や嘉納治五郎センターへの支払いについて触れていない。JOCは、招致委とは別組織であり、同センター及び高橋氏に対する支払いについては「当初から承知していない」と答えた。
しかし、企業などの不祥事に関する第三者委員会の調査報告書を評価する「第三者委員会報告書格付け委員会」は同報告書について、調査が不十分である、と指摘している。
五輪招致をめぐる贈収賄疑惑の追及は、ロシア選手ドーピング隠ぺい問題も含め、フランス検察当局が続けている国際スポーツ汚職事件の捜査の一環で、日本政府は全面的な協力を約束している。
しかし、ロイターが閲覧した仏検察の捜査記録によると、昨年6月まで捜査を指揮していたルノー・バン・リュインベック判事は、日本の検察当局からの情報は仏側が求めていた全ての情報ではなかった、と非公式に語っている。同判事、そしてこの事件の現在の担当判事もロイターの質問には答えていない。日本の法務省もロイターの質問に対しコメントを控えている。
IOCは、仏司法当局に全面的に協力し、捜査プロセスの「秘匿性を尊重する必要がある」とする一方、IOC自体が被害者であり、何らかの賠償を求める可能性もあるとしている。
日本政府はロイターの質問に対して「コメントを差し控えさせていただきたい」(西村明宏官房副長官)と回答。日本政府としての説明責任については「招致活動の主体となっていたJOCおよび東京都において説明を行うべきものと考えている」(同)と述べている。東京都のコメントは得られていない。
(取材協力:Daniel Leussink, Sam Nussey, Gabrielle Tetrault-Farber in FRANCE and RUSSIA, Edward J. McAllister in SENEGAL 編集:北松克朗、Peter Hirschberg)
[東京/パリ 31日 ロイター]

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