新型コロナウイルスによる中国工場停止でサプライチェーン混乱 日本も感染拡大、景気先行き視界ゼロ
感染拡大、新たな不安
ここへきて、ウイルス感染が世界各国へ拡大、不透明感はさらに高まっている。
中国工場で組み立てた完成品を輸入しているリズム時計工業では「春節明けの5割の稼働状況から、今週に入りようやく7─8割程度に回復してきた」(経営企画部)としつつも、「今後感染が幅広く拡大すると影響が出てくる。まだどうなるか見極めがつかない」と懸念を示す。
中国大連工場で金属加工を手掛ける多摩冶金でも、主な納入先である日系自動車メーカーが今週から再開したが、山田毅社長は「中国の経済が全体的に縮小した場合は、自動車の販売台数が減る可能性がある。影響を受ける可能性はないとは言い切れない」と不安を示す。
コロナウイルス拡大により、為替市場では円高が進んでいる。108円から109円は多くの企業が1─3月の想定レートとしており、円高がさらに進めば影響が出てくる。
影響は中小企業にも広がっている。
東京商工会議所には、新型コロナウィルス関連の相談窓口を設置した1月末から2月20日までで、累計316件の相談が寄せられた。宿泊業の客数減に加え、製造業を中心に中国の操業停止による部品供給の停止、商品の未納、中国工場の従業員確保といった問題が多数、寄せられている。
愛知県の旅館業など一部企業の経営破綻も伝えられるなか、経済産業省は28日、資金繰り支援強化に踏み切った。
1─3月もマイナス成長か、政府高官も懸念
国内景気の見通しも、今月初めまでは1-3月はわずかながらもプラス成長に転じるとの見方が多かったが、様相が変わってきた。
ある政府高官は「感染拡大の影響が長期化して4─6月まで終息しないとなると、景気の基調に影響が出てくる可能性がある」として、日本が景気後退に陥いる懸念をにじませる。
28日に発表された鉱工業生産予測調査でも2月が上昇、3月低下となり、経済産業省では「3月までみれば生産低下の見込みが高い」とみている 。調査は今月10日締め切りだったため、新型コロナウイルスの影響が十分織り込まれていないにもかかわらず、当初期待ほど生産は回復しないと企業がみていることがうかがえる。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは「日本の1-3月期GDPは、前期比でマイナス成長が続く可能性が高い」とし、感染拡大が終息に向かう時期は全く見通せず、現在、 日本経済は視界ゼロの状態にあるとみている。
UBSは、1─3月期のGDPは年率マイナス1.0%と予想している。
*バイラインを追加しました。
(取材協力:平田紀之 山崎牧子 金子かおり 編集:石田仁志)
中川泉
[東京 ロイター]
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