最新記事

アフリカ

バッタ大量襲来で食糧危機 アフリカ東部、過去70年間で最悪の状況

2020年2月4日(火)18時15分
松岡由希子

ケニアでは過去70年間、エチオピアやソマリアでは過去25年間で最悪の状況 Giulia Paravicini-REUTERS

<アフリカ東部でバッタが大量に発生して深刻な被害をもたらしている。ケニアでは過去70年間、エチオピアやソマリアでは過去25年間で最悪の状況>

バッタが大量に発生して農作物や牧草を食い荒らす「蝗害(こうがい)」がアフリカ東部で深刻な被害をもたらしている。ケニアでは過去70年間、エチオピアやソマリアでは過去25年間で最悪の状況だ。

国際連合食糧農業機関(FAO)は、「非常に深刻で前例のない脅威である」とし、「何らかの対処をしなければ、2020年6月までにバッタの数が500倍に増大し、ウガンダと南スーダンにまで被害が拡散するおそれがある」と警鐘をならしている。

インド洋の海面温度があがり、昨年の降雨量が最多の影響で

体重およそ2グラムのサバクトビバッタは自重と同量の食料を毎日摂取し、1日あたり150キロメートルを移動する能力を持つ。1平方キロメートルあたり1億5000万匹のサバクトビバッタが3万5000人の一日分の食料に相当する農作物を毎日消費し、短期間で繁殖しながら長距離を移動するため、広範囲にわたって脅威となる。地域住民の食料のみならず、家畜用飼料も不足し、農業や畜産業に大きな被害をもたらす。

東アフリカでは2019年10月から12月までの雨季の降雨量が過去40年間で最多となった。インド洋西部の海面温度が上昇する「インド洋ダイポールモード現象」という気候変動がもたらしたと考えられている。高温と大雨は繁殖に適した環境であることから、サバクトビバッタが大量に発生したとみられている。

FAOの予測によると、ケニアでは、モスクワの面積に相当する2400平方キロメートルにわたって2000億匹のサバクトビバッタの大群が押し寄せ、すでに約7万ヘクタールが被害を受けた。

ケニアのピーター・ムニャ内閣官房長官は、1月15日、飛行機を用いた防除作業を3回にわたって実施する方針を明らかにしている。

また、ソマリア政府は2日、国家非常事態を宣言した。蝗害はアフリカ東部のみにとどまらない。サウジアラビアやイエメンの紅海沿岸、イラン南部、インドやパキスタンでも同様に、蝗害の発生リスクが指摘されている。

国連も支援を発表、緊急支援を呼びかけ

人道問題担当のマーク・ルーコック国連事務次長は、1月23日、東アフリカでのサバクトビバッタの大量発生に伴う被害への対策として、国連中央緊急対応基金(CERF)から1000万ドル(約10億8500万円)を充てることを発表した。

FAOでは、最も深刻な被害を受けているエチオピア、ケニア、ソマリアの3カ国を対象に、防除作業と住民の生活保護に向けて7000万ドル(約75億9500万円)の緊急支援を呼びかけている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中