最新記事

死体ビジネス

南アフリカで遺体レンタルが流行る理由

South African Police Trying to Crack Down on 'Corpse Rental' Services

2020年1月14日(火)16時50分
K・ソア・ジェンセン

死体は、あらかじめ身元がわからないように損壊して貸す場合が多い mariapazmorales/iStock

<南アフリカに、遺体をレンタルする犯罪シンジケートがある。これを支えるのは、人々の保険金詐欺ニーズだ>

南アフリカ共和国で、遺体をレンタルする犯罪シンジケートやそのサービスを利用した保険金詐欺が横行している。

南アフリカのインデペンデント・オンライン(IOL)の取材に応じた南アフリカ保険犯罪局(ICB)のガース・デ・クラーク局長は、以前から遺体を使った詐欺事件に取り組んでいると言った。つい最近も、前年に死亡した人の保険金を詐取しようとする請求があったという。

「昨年4月に死亡した人物と同じ人物に、2度目の保険金請求があった」と、クラークは言う。遺体レンタル業が多くの遺体があちこちの安置所に移動させるため、混乱やまちがいの土壌になっているという。

遺体レンタル・シンジケートは通常、顧客の要望に応じて死体を運ぶ前に、遺体を焼いたり傷つけたりして身元が特定できないようにする。その上で新たな検視官に持ち込む、とIOLは伝えている。

南アフリカ保険犯罪局は、新たな指紋技術を導入し、死亡証明書に添付するよう義務づける予定だ。

IOLが記事で紹介している南アフリカ貯蓄投資業協会(ASISA)の2018年報告書によると、わかっているだけで生命保険の不正請求は3708件、その金額は6929万8500ドルに上る。

<参考記事>殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

検視不要の葬儀保険が狙い目

ASISA会長のドノバン・ハーマンはIOLに対し、そうした不正請求の大半は葬儀保険だと語った。葬儀保険の請求では、遺体の血液検査や検視などが不要で、保険金が迅速に受け取れる仕組みだからだ。

南アのニュースサイトNews24によ、2019年11月には2人の男が偽名を使い、公共安置所にあった引き取り手のいない遺体を入手しようとしたとして逮捕された。男たちは、遺体を手に入れたら民間の葬儀場に持ち込み、保険金を請求しようしていたようだ。

<参考記事>介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕

遺体を使った詐欺は、今に始まった犯罪ではない。2012年に国際公共放送(PRI)が報じたところによると、2人の南アフリカ人が Aphiwe Ntombelaという偽の女性をでっちあげ、その名前で3件の生命保険に加入した。彼女が死んだことにすれば、総額1万1000ドルの保険金が手に入る算段だった。

2人はその後、第二の都市ダーバンの葬儀ディレクターに接触し、女性の遺体を借してほしいと持ちかけた。ディレクターはそれに応じ、42歳の女性の遺体を別の都市の葬儀場に移送し、医師に死亡証明書を発行させようとした。

この計画は未遂に終わったが、遺体レンタルの盛況は、まんまと保険金をせしめた犯罪者やその予備軍の多さを示している。

(翻訳:ガリレオ)

20200121issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

OECD、世界経済見通し引き上げ 日本は今年0.5

ワールド

ロシア製造業PMI、4月は54.3 3カ月ぶり低水

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中