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LGBTQ

紅白歌合戦になぜレインボーフラッグ? NHKに聞いてみた

2020年1月24日(金)18時20分
大橋 希(本誌記者)

――星野源さんがピンクのダウンジャケットを着ていたのも、ある種のメッセージだったのか。

あれはたぶん、前年の発言(「紅組も白組も性別関係なく、混合チームで行けばいいと思う」)に思いのほか反響があって、ご本人がね(考えた)。

まあ、MISIAのシーンへの反響から、セクシャルマイノリティーの方の中には「紅と白で男女が分かれる」番組を見るのが辛いという方もいるんだと、改めて感じました。

――将来的には、紅白でなくなる可能性もある?

そういう議論が起こる可能性もあるが、「紅白」という大きな枠組みは変わらないと思う。紅白と言っている以上、紅白だよな、みたいな。ある種、哲学的ですが......。

ただ今回は特別企画として、紅でも白でもないプレゼンテーションを増やした。かつては本当に、紅組と白組の「対戦」を意識して演出していた。それがいつの間にか、1組ずつ対戦していくのではなく、きれいに進行が流れるようなフォーマットに緩やかに変わってきている。視聴者のみなさんも次は紅組、白組というより、次はこのアーティスト......と自然に受け入れるようになっているんじゃないかと思います。一方で、対決色が薄まっていることへの批判もある。特に昔の紅白が好きな年配の方には、原点を見失っているのではないかと言われる方もいる。

――氷川きよしさんも注目されたが、多様性をうたったMISIAにつながる演出と考えていいのか。

氷川さんの場合は、「演歌界のプリンス」と言われた20年間で築き上げてきたアーティスト像を打ち破って、今の表現に行きついたことに世の中がびっくりし、共感しているから、あそこまで話題になったと思うんです。彼の場合は、特にご自身のセクシャリティーに言及しているわけでもないし、ただ一貫しているのは「自分らしく生きていく」という発信。紅白の現場でもその決意を感じましたね。

――視聴者の反応で印象深かったのは? 例えば、ジャニーズのグループが多過ぎるとか......。

それは毎年言われていることですが(笑)、ネットなどの反響を見ると、やはりこのMISIAのシーンのインパクトが大きかったようです。伝えるべきことはきちんと伝わった、お祭り騒ぎとは違う伝わり方をしたとすごく感じられた。

批判的な意見も覚悟していたし、なぜ今この6色を演出したのかと問われたとき、ちゃんとお話しできるよう用意はしていた。でもびっくりするくらいネガティブな反応がなかった。

――そう意味では、日本社会はだいぶ変わった?

まだまだ課題は多いと思います。LGBTQのみなさんが自分たちの生きづらさを伝えたいと思ったときに、なかなかその手段がないのは事実ですし。そのときに、少しずつ理解を深める手段という意味では、エンターテインメントもその1つかなとは思う。

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