最新記事

人体

ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことがわかった

2019年12月27日(金)16時00分
松岡由希子

老化は一定のペースで継続的に進行するのではなかった ...... Xesai -iStock

<スタンフォード大学の研究チームがヒトの血漿タンパク質を分析したところ、老化は一定のペースで継続的に進行するのではないことがわかった ......>

血中のタンパク質の測定によってヒトの健康状態を診断できることは広く知られているが、このほど、血中のタンパク質レベルによって、ヒトの年齢を精緻に予測できることがわかった。

老化は一定のペースで継続的に進行するのではない

米スタンフォード大学のトニー・ウィス=コレイ教授らの研究チームは、18歳から95歳までの4263名から得た血液サンプルを用いて2925の血漿タンパク質を分析し、2019年12月5日、その結果をまとめた研究論文を学術雑誌「ネイチャーメディシン」で発表した。

この研究論文では、老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく、34歳の青年期、60歳の壮年期、78歳の老年期という3つのポイントで急激に進むことも示されている。

タンパク質は、身体を構成する細胞からの指示を実行する働きを担っている。それゆえ、タンパク質レベルの大幅な変化は、身体の変化を意味する。

生理的老化は34歳、60歳、78歳で急激に起こる

研究チームは、各被験者の2925の血漿タンパク質のレベルをそれぞれ測定し、そのうち1379のタンパク質レベルが被験者の年齢によって明らかに異なっていることを突き止めた。また、被験者の年齢は、これらのうち373のタンパク質によって、概ね3年程度の誤差で精緻に予測でき、9のタンパク質でも、ある程度の精度で予測が可能だという。

加齢のみの要因で不可逆的に生じる生体の変化、すなわち「生理的老化」は、平均34歳、60歳、78歳の3つのポイントで急激に起こることも示されている。多くのタンパク質は、一定のペースで増減したり、生涯、同じレベルを維持するのではなく、一定期間、同じレベルを保ち、特定のポイントで、突然上下に変動しているのだ。

年齢によってそのレベルが明らかに異なる1379のタンパク質のうち、895のタンパク質は、性別によっても特徴が認められた。男性と女性で老化プロセスが異なることを示す成果のひとつとしても注目されている。

老化を遅らせる薬剤や治療法の開発などの応用が期待されている

ウィス=コレイ教授は、2014年5月に「若齢マウスの血液は、老化に伴う認知機能などの低下を抑制する」との研究成果を発表し、老化によって血中で分子の変化が起こっていることを示したが、今回の研究成果は、抗老化医学をさらに前進させるものだ。

臨床応用までにはさらに5年から10年を要するものの、血中のタンパク質を「老化バイオマーカー」として老化の急速な進行を特定したり、老化を遅らせる薬剤や治療法を開発したり、老化を加速させる薬剤の副作用を早期発見するなど、様々な分野での応用が期待されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

大企業の業況感は小動き、米関税の影響限定的=6月日

ビジネス

マスク氏のxAI、債務と株式で50億ドルずつ調達=

ワールド

米政府、資源開発資金の申請簡素化 判断迅速化へ

ワールド

訂正-セビリアで国連会議開幕、開発推進を表明 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中