最新記事

中東

サウジ攻撃の内幕 イランはなぜアラムコを狙ったのか

2019年11月30日(土)11時05分

ターゲットの取捨選択

イランの政策意思決定をよく知る当局者によれば、イラン軍指導部によるサウジ石油関連施設攻撃の計画は、数カ月かけて練り上げられたという。「少なくとも5回の会合を経て、細部にわたるまで徹底的に詰められ、9月早々に最終的なゴーサインが出た」と、この当局者は語る。

3人の当局者はロイターに対し、会合はすべてテヘラン南部の複合施設の内部にある安全な場所で行われたと語った。最高指導者ハメネイ師も、同じ施設内にある邸宅で行われた際、会合に出席したという。

当初、ターゲットの候補として挙がったのは、ウジアラビアの港湾、空港、米軍基地だったという。

いずれも最終的には却下された。犠牲者が多数出て、米国による激しい報復を引き起こしたり、イスラエルが大胆な姿勢を取ることで、中東が戦争状態に陥る懸念があったからだと、4人の関係者は言う。

そして最終的に、サウジアラビアの石油関連施設を攻撃する計画に落ち着いた。大きな注目が集まり、相手に経済的な苦痛を与えつつ、米国政府に強いメッセージを送ることができると判断したという。

「アラムコ(を標的にする)という合意は、ほぼ満場一致だった」と、イランの政策決定過程に詳しい当局者は言う。「このプランなら、イランが(サウジの)奥深くまで入り込み、(ダメージを与える)軍事能力を持っていると示せる」

中東の関係者によると、出撃拠点となったのはイラン南西部アフワーズの空軍基地。これはロイターの取材に応じた米国当局者3人、その他2人の人物の話とも一致する。

石油アラムコの施設を狙ったミサイルとドローンは、イランからペルシャ湾を越えて直接サウジアラビアへ飛ぶのではなく、別のルートを取ったという。自国の関与を隠蔽するためだったと、この関係者は話す。

西側の情報機関筋によれば、ミサイル、ドローンの一部はサウジアラビアに到達するまでにイラクとクウェートの上空を飛行した。そのためイランは、もっともらしく関与を否定することができたという。

イラン政府内の事情に詳しい関係者によれば、攻撃の数時間後、革命防衛隊の指揮官らはハメネイ師に攻撃成功を報告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同

ワールド

ウクライナ大統領18日訪米へ、うまくいけばプーチン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中