最新記事

韓国社会

ソルリの死を無駄にはしない 韓国に拡がる悪質コメント禁止の動き

2019年11月19日(火)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

韓国のネットにはびこる悪質コメント、ソルリの死はそれを止めるきっかけになるか SBS / YouTube

<自殺率が高い韓国で、一人のアイドルの死が与えた影響とは>

今年、韓国統計庁が発表した2018年の死亡原因を見ると、韓国人の10万人当たりの「自殺率」は26.6人だった。OECD(経済協力開発機構)では加盟国の年齢構成の影響を考慮した国際比較を行っているが、この調整をした韓国の自殺率は24.7人。OECD平均11.5人の2倍を超え、前年ワーストワンだったリトアニアを抜き1位となった。これについて韓国政府は「有名人の自殺事件が多かったことが影響した」と分析している。そんななか、一人の芸能人の自殺が法律をも動かすほどの社会問題となり、注目を集めている。

10月14日、元人気女性アイドルグループf(x)のメンバーだったソルリ(本名チェ・ジンリ)が自宅で亡くなっているのを発見された。長年、ネットなどを通じて自身についての悪質な誹謗中傷に悩まされていたソルリは、自ら死を選んだのだ。

この悲報を受け、同じ事務所に所属しているアイドルらはその日、もしくは近日発表予定だった映像コンテンツの公開延期や、ショーケースの延期を発表した。男性アイドルグループSUPER JUNIORは動画配信をキャンセル、同じくアイドルグループSuperMは、その日行われる予定だった特番「superM the beginning」の収録を延期。少女時代のテヨンもニューアルバムのリリースを延期した。また、ソルリとともにf(x)に所属していたルナとエンバも、それぞれの活動中断を発表した。このように、次々と発表されるスケジュールの変更が、ソルリの自殺の衝撃の大きさを物語っている。

有名人を死へ追い詰める"指殺人"

ネットが普及し始めたころから、韓国では「悪質書き込み」による芸能人の自殺がたびたび取り沙汰されるようになってきた。キーボードを叩き書き込んだコメントによって死まで追い詰めることから「指殺人」と呼ばれ、社会問題にまで発展している。事務所が守ってくれて、相手を特定し罰することができればいいが、できない場合、もしくは書き込みがあまりにも精神に与える衝撃が大きい場合には、悲劇的な方向に向かってしまうことも多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ワールド

アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力

ビジネス

ロシュ、米バイオ企業を最大35億ドルで買収へ 肝臓
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中