最新記事

韓国社会

ソルリの死を無駄にはしない 韓国に拡がる悪質コメント禁止の動き

2019年11月19日(火)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

悲劇は繰り返されてきた

過去10年間に亡くなった芸能人で、悪質書き込みが原因の自殺だった例を見てみると、日本でも一時期活躍していた女性シンガーU;Nee、同性愛者とカミングアウト後にネット上の中傷書き込みで自殺に追い込まれた俳優キム・ジフ。また、2008年に人気女優チェ・ジンシルが自殺した事件は国内に大きな衝撃を与えた。彼女をめぐっては「前月に自殺した俳優アン・ジェファンに金を貸していた」「裏で金融業をしている」といった誹謗中傷がネット上に流れていた。さらに彼女の周辺では、その2年後には実弟テェ・ジニョン、2013年には元夫で読売ジャイアンツで投手として活躍したこともあったチョ・ソンミンも自殺するなど不幸が続いた。

また、今年の5月に自宅で意識不明の状態で発見された元KARAのメンバー、ク・ハラの事件は記憶に新しい。元交際相手からのリベンジポルノと美容整形に関するネット上での悪質書き込みが自殺未遂の原因だと言われている。その他、ネット上での誹謗中傷を受け、鬱病発症や、生活に影響が出ていると発表している芸能人は多い。

悪質コメントめぐり法規制やネット企業が対策へ

このように、大きな社会問題にまで発展しているネットでの悪質な書き込みについて、法律で取り締るべきだ、という世論の声が高まっている。正しい未来党のパク・ソンスク議員は、10月25日にポータルサイトを含む情報通信サービス提供者に、誹謗中傷表現を削除する義務を追加した「情報通信網利用促進及び保護に関する法律一部改訂案」を発議した。続いて、自由韓国党のパク・テチュル議員も、国政監視へ今回の悪質書き込みを指摘し、これの根絶と処罰を強化する法律の改正案発議を発表した。これらの禁止法については、亡くなったソルリの名前を取って「ソルリ法」という通称で一般化し始めている。政府内でもこの問題を重く見ており、パク・ヤンウ文化体育観光部長官は、質疑の場で「(悪質書き込みによる自殺に関し)責任感を感じている」と公式発言し大きく報道された。

このままではいけないと、ネット関連企業も悪質書き込み対策に取り組みだした。韓国ポータルサイト2位daumを運営するカカオは、芸能ニュース記事のコメント欄を閉鎖することを10月末に発表した。ニュースを見た一般人がそのニュース記事の下に意見を書き込めるようになっていたが、誹謗中傷コメントが多かったため、この部分をサイトから削除したのだ。また、韓国最大のポータルサイトNAVERも、AIが悪質なコメントを自動で削除するシステムを、ニュース記事全体に使用することにした。以前から特定の差別用語などを「○○○」という表示に隠す技術はあったが、今回導入されたAI「クルリンボッ」は、文脈などからも学習・判断したうえで不適切なコメントを批評時にするという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾、「パックス・シリカ宣言」署名 米主導AI関連

ビジネス

午前のドルは152円後半、トランプ氏発言からの下げ

ビジネス

インドネシア株7%安、MSCIが投資適格性リスク軽

ビジネス

豪CPI、第4四半期コアインフレ率が予想上回る 来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    「発生確率100%のパンデミック」専門家が「がん」を…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中