最新記事

アメリカ外交

米軍シリア撤収で注目される民主有力候補の外交アドバイザー

2019年11月6日(水)18時00分

トランプ米大統領がシリア北部から米軍を完全撤収したことを巡り、野党・民主党の有力大統領候補はこぞってトランプ氏を非難した。写真は10月、オハイオ州ウェスタ―ビルで行われた民主党候補者討論会に出席した(左から)サンダース氏、バイデン氏、ブティジェッジ氏、ウォーレン氏(2019年 ロイター/Shannon Stapleton)

トランプ米大統領がシリア北部から米軍を完全撤収したことを巡り、野党・民主党の有力大統領候補はこぞってトランプ氏を非難した。米国の国際的な信頼を損なう行為だ、との批判だ。

だが同時に、候補者それぞれが大統領の立場にいたらどうしていたかという議論も生まれ、大統領選としては珍しく米国の外交政策が争点として浮上してきた。

10月にオハイオ州で開かれた討論会では、バイデン前副大統領が、米国と連携してきたクルド人を守るためシリアでの米国のプレゼンスを維持するべきだ、と主張。左派のウォーレン上院議員は、米軍を中東地域から引き揚げさせたいとの持論を展開した。

それぞれの候補がトランプ政権の外交をどう変えるつもりなのかを理解する上で、ロイターは各陣営に助言を提供している専門家に着目。あまり表舞台に出てこない彼らが、将来誕生するかもしれない民主党政権に与える影響を考えてみた。

ベテランをそろえたバイデン氏

外交政策立案の中心にトニー・ブリンケン氏を起用したバイデン氏の選択からは、自分こそがトランプ政権の「影響」を解消できる経験を持つ唯一無二の民主党候補だ、との自負がうかがえる。

ブリンケン氏は、クリントン政権時代に安全保障分野の高官を務め、古くからのバイデン氏の側近でもある。08年にバイデン氏が大統領選に挑戦した際には助言役となり、その後、オバマ政権で副大統領となった同氏の安全保障アドバイザーとして紛争地域への訪問にも同行。自身も国務副長官を経験したほか、11年5月には安全保障チームの一因としてアルカイダ指導者のウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦をホワイトハウスから見守った。

バイデン氏は、2003年の米軍によるイラク侵攻前の国連大使だったニコラス・バーンズ氏もアドバイザーに迎えている。

トランプ氏はシリアからの撤収について、「終わりなき戦争に終止符を打つ」取り組みの一環だと正当性を訴えている。しかしブリンケン氏はロイターのインタビューで、トランプ氏は実際には今年になって中東への部隊派遣を拡大しており、そうした主張に説得力はないと切り捨てた。

ブリンケン氏は、シリアなどから部隊を完全撤収すれば力の空白が生まれ、地域の混乱を招くと指摘。米国が主導権を放棄するのは、国民の生命や国益の観点からかえってマイナスが大きいとの見方を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳が電話会談、プーチン氏はウ和平交渉巡る立場

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中