最新記事

動物

インドネシア、巨大ヘビから妻救出した夫、ブタ丸呑みで立ち往生のヘビ救った男たち

2019年11月1日(金)17時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

人間も丸呑みするヘビの恐ろしさ

今回のヘビの「被害者」は野生ブタであり、巻き付かれた女性も夫の勇気ある行動で解放されたが、インドネシアではこれまで人間がヘビに丸呑みされて死亡したり、襲われるなどして重傷を負う事案が毎年のように発生している。

2018年6月15日には前日から行方不明となっていたスラウェシ島東南スラウェシ州の54歳の女性が付近にいた異様にお腹の膨れたニシキヘビ(全長7メートル)を殺して腹部を割いたところ、中から遺体となって発見されたことがある。

さらに2017年3月24日には同じスラウェシ島で行方不明となっていた25歳の男性が近くにいた約7メートルのヘビの体内から遺体で発見されている。

同年9月にはスマトラ島リアウ州で男性が全長7〜8メートルの巨大なアメニシキヘビに左腕を噛まれて切断寸前になる事故も起きている。この男性はヘビが好物で食用にするために捕獲しようとして噛まれたという(「全長7mの巨大ヘビが女性を丸呑み インドネシア、被害続発する事情とは」)。もっとも、インドネシアではヘビが人間を丸呑みすることは稀で、捕獲を試みるとか、誤って踏みつけでもしない限り襲ってこないといわれている。

インドネシアでヘビは「悪魔の化身」

インドネシアの人口の88%を占めるイスラム教徒にとってヘビは「悪魔の化身」として嫌われているが、男性の中には強壮剤、健康食品などとして食用にするケースも多く、首都ジャカルタの北部中華街には夜ともなると生きたままのコブラはじめ各種ヘビを食用に提供するヘビ屋台が複数軒を連ねる。

生き血はそのまま薬味と混ぜて飲み、引き裂いて細かく切り刻んだ肉は串刺しにして「焼き鳥」ならぬ「焼き蛇」として食べる。味は焼き鳥と大差なく、ヘビと知らなければ結構美味で堪能できる。

こうした食用として捕獲を試みる人がいる一方で、原野や森林の乱開発が原因でヘビ生息地の自然環境が破壊され、エサとしてサルや野犬、イノシシなどが集まる農園に出没するケースが増えており、それだけ人間と遭遇することも多くなっていると警察などでは注意を呼びかけている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中