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躍進のラグビー

ラグビーの歴史・経済・未来・課題──今、歴史的転換点を迎えている

THE FUTURE OF RUGBY

2019年11月1日(金)17時15分
マルコム・ビース(ジャーナリスト)

19世紀のラグビー校で始まった素朴なフットボール POPPERFOTO/GETTY IMAGES

<日本代表の快進撃で、初のアジア開催ラグビーW杯は大成功。グローバル化、賃金格差、女子ラグビー、放映権......。私たちは今、遅れて来た人気スポーツの「進化」を目撃している>

※10月23日発売「躍進のラグビー」特集より

雨にも負けず、試合を中止にしたら法的措置も辞さないとの圧力にも負けず、日本はスコットランドを撃破してラグビー・ワールドカップ(W杯)の1次リーグを突破した。終わってみれば28対21 、最後はディフェンス陣の奮闘でリードを守り切った。

かくしてベスト8に勝ち進んだ日本は歴史を書き換えたのだが、それだけではない。ラグビーが真にグローバルな競技であることも証明した。

「どの試合も中立的な立場で見ているが」と言ったのは、スイス・ラグビー協会の代表でW杯の統括団体ワールドラグビーの理事会にも名を連ねるフェロニカ・ミュールホファー。「日本の試合には興奮したし、質の高さにも感動した。伝統的な強豪国以外が準々決勝に進出できたのは、この競技が世界中に根付いた証拠だ」

ラグビーの誕生は1823年のイングランド。ウィリアム・ウェブ・エリスという少年がフットボールの試合中、手でボールをつかんで走り出したのが起源だ。やがて競技団体ができ、ルールが整えられると、ラグビーはすぐ世界に普及した。当時のイギリスが世界の大国で、イギリス人は世界のどこにもいたからだ。技術的には未熟な競技だし、お金にもならなかったが、仲間意識を高め、現地の人との交流を深めるには大いに役立った。

日本も例外ではない。ジャパン・タイムズの前身となる英字紙の報道によると、早くも1866年に「横浜フットボールクラブ」が設立されている。40人を超す創設メンバーにはイギリス海軍の士官も含まれていた(薩摩藩士がイギリス人を殺傷した「生麦事件」からほんの数年後のことだ)。メンバーには名門ウィンチェスター校やラグビー校の出身者もいるので「立派な試合を見られることだろう」と、その記事にはある。

こうしてラグビーは世界に進出したが、人気の点ではサッカーやクリケットに遠く及ばなかった。理由の1つはプロ化の遅れだ。週末に試合で汗を流す選手たちも、平日は弁護士や医師、軍人、あるいは会社員として働かざるを得なかった。ラグビーが肉体的に苛酷なスポーツで、競技人口を増やしにくいという問題もあった。世界中でラグビーが脚光を浴びるのは、1995年にプロ化されてからだ。

日本の視聴率が50%を超えた

世界には2017年現在、ラグビー協会が121ある。登録選手は350万、非登録の競技人口は推定880万(ちなみにサッカーの競技人口は2億人以上とされる)。アジアのラグビー競技人口は約102万、アフリカは120万、北米とカリブ海諸国は178万、ヨーロッパは398万、オセアニアは98万、南米は69万となっている。

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