最新記事

香港のこれから

【デモ隊の告白6】「次の世代のために自分が銃弾を受け止める番」20歳女性

CONFESSIONS OF A MASK

2019年11月30日(土)13時55分
チャン・ロンヘイ(写真)、ウィニー・ウォン(文)

PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI

<香港がこの先どうなるか、まだ見通せない。これまで半年、香港のデモ参加者たちは何のために戦ってきたのか。本誌「香港のこれから」特集より>

香港で逃亡犯条例改正案に反対するデモが始まって6カ月。身の安全を守るため、デモ参加者のほとんどはマスクで顔を隠してきた。

時に暴徒と非難されながら、彼らは何のために戦ってきたのか。その素顔と本音を香港人の写真家・ジャーナリストが伝える。

本誌12月3日号(発売中)「香港のこれから」特集で取り上げた、15人のデモ参加者による「仮面の告白」。その1人をここに掲載する。

前線に立つ女性 花ちゃん(20)

もともとは「和理非」だった。街に出て抗議活動に参加するのは中国共産党の司法システムを信用できないから。2014年の雨傘運動のときはまだ中学生で、年上のお兄さんお姉さんが街に出て頑張ってくれた。今は、自分が次の世代のために銃弾を受け止める番。責任を果たすため、前線に立つようになった。

政府本部のバリケードの前にいたとき、14、15歳の男の子が1人で歩いてきた。痩せて傘も持っていなかったので、自分のそばにいるようにと声を掛けた。そのとき、急にバリケードの裏側にいた警察が銃撃し始め、(銃弾を受けた)その子が顔を覆って痛いと叫んだ。その瞬間は本当に心が痛んだ。

多くの知り合いの女性が前線に立っている。デモ参加者の男女比率は7対3か6対4ぐらい。女性は「消火隊」がほとんど。しかし、警察による性暴力があるとの噂が広がり、仲間たちは最前線に行かないようにと声を掛け合うようになった。

一時期、香港に対して希望を失っていた。しかし今は、若い子たちにデモを手伝ってもらったことで、再び香港に対して希望を持つようになっている。本当に、いつか煲底(香港議会近くにあるデモエリアで香港民主運動に深く関わる場所)でみんなと再会し、マスクを外して抱き合いたい。

<2019年12月3日号「香港のこれから」特集より>

※他のデモ参加者による「仮面の告白」:
【デモ隊の告白1】「前線にも行った。香港にはまだ希望を持っている」女子高校生
【デモ隊の告白2】「北京の仕事を辞めて香港に戻り、消火部隊に入った」25歳女性
【デモ隊の告白3】「民主はなくてもイギリス人は愛国心を押し付けなかった」運転手
【デモ隊の告白4】「僕は会社にも行くが、闘争こそが真実」フル装備の香港人男性
【デモ隊の告白5】「この街が好きな理由を取り戻したい」香港人救急ボランティア
【デモ隊の告白7】「中国本土で生まれ、愛国心のある子供だったが」24歳男性
【デモ隊の告白8】「香港が中国のただの1つの省になってほしくない」中産階級の男性
【デモ隊の告白9】「警察を調査しないと、みんなの気が済まない」駅で花を供える女性
【デモ隊の告白10】「なぜ若者が遺書まで書き残し、立ち上がるのか」断食をした老人
【デモ隊の告白11】「レノンウォールの『成長』に衝撃を受けた」見守る香港女性たち
【デモ隊の告白12】「プロテスタントとカトリックが支援に駆け付けた」香港の牧師

20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦、ハマスが人質3人解放 イスラエルも90人

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明らかに【最新研究】
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中