最新記事

スポーツ

中国に謝罪したNBAに米議員が猛反発

U.S. Lawmakers Heap Criticism on NBA Following Stance on China Tweets

2019年10月8日(火)18時45分
タレク・ハダド

中国とアメリカの板挟みになったNBA Brendan McDermid-REUTERS

<香港の民主化デモを支持して中国を激怒させた件でNBAロケッツのGMが謝罪に追い込まれたのは、金儲け主義で偽善なのか>

北米の男子プロバスケットボールリーグNBAに対する米議員の批判がますます強まっている。焦点は、NBA所属チーム「ヒューストン・ロケッツ」のゼネラルマネージャー(GM)、ダリル・モーリーの中国を怒らせたツイートだ。

モーリーは10月4日、「自由のために闘おう。香港と共に立ち上がろう」と書かれた画像をツイートした。香港で続く大規模な民主化デモを支持したものだ。

すると、中国人ファンや中国のスポンサー企業から批判が殺到。企業からは提携解消が相次いだ。ロケッツの試合を放送・配信を止めた放送局や配信会社もある。

中国はNBAのドル箱市場。なかでもロケッツは中国で圧倒的な人気を誇っている。中国を怒らせたら大変だ。


モーリーは7日、「誰も傷つけるつもりはなかった」とツイートで謝罪した。「中国ファンやスポンサーの素晴らしい支援にはいつも感謝している」と、付け加えた。

NBAは彼の謝罪ツイートを引用した上で、「彼のツイートはロケッツやNBAを代表するものではない」と言い、モーリーの「問題発言」とも謝罪とも距離を置いた。

これに怒ったのが、アメリカの議員たちだ。多くは、モーリーに罪をかぶせたNBAの対応を「偽善的」だと批判している。

NBAの選手が、社会問題について積極的発言した事例はこれまでにも数多い。NBAもほとんどの場合、そうした発言を容認してきた。

この姿勢は、全米プロフットボールリーグ(NFL)と対照的だ。NFLは2016年、当時「サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ」に所属していたクオーターバック、コリン・キャパニックが国歌斉唱時の起立を拒否する抗議行動を始めたときには、これを厳しく罰したことで知られる。

中国に謝るな?

NBAを厳しく批判する議員の1人、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出、共和党)は、ツイッターで次のように述べた。

「生涯を通じてヒューストン・ロケッツを応援してきたファンの1人として、私は香港のデモ参加者に対する中国共産党の強圧的な扱いにモーリーが抗議の声を上げたことを誇らしく思った。しかし今、恥ずべきことに、NBAはカネのために態度を翻した」

テキサス州選出の元下院議員で2020大統領選に向けた民主党候補の一人、ベト・オルークも、NBAは「恥を知るべき」と批判する。「NBAが謝罪すべきなのは、人権よりも金銭的利益を優先するその厚顔無恥さだ」と述べた。

マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出、共和党)も、ツイッターでNBAを非難した。

「NBAの選手は、アメリカでは政治や社会問題について自由に発言できる。だが中国に対しては、NBA幹部が民主化デモを支持するツイートをしたことについて謝罪している。偽善だ」

他にも多くの議員が、NBAを非難している。

<参考記事>鳥も酒もアイドルドラマも禁止 中国「権力に尽くす」式典の虚しさ
<参考記事>トランプへのスポーツ選手の抗議、今後拡大する可能性も

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:気候変動で加速する浸食被害、バングラ住民

ビジネス

アングル:「ハリー・ポッター」を見いだした編集者に

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中