最新記事

アメリカ政治

共和党の大票田テキサスに民主党旋風が吹く?

Texas Sees Democratic Party Rise as White Liberals Arrive For Great Economy

2019年9月13日(金)17時30分
ベンジャミン・フィアナウ

民主党のピート・ブーテジェッジ(中央)と支持者(ロスアンゼルス、8月27日)

<共和党が推し進める企業寄りの政策が支える好景気を目当てに、白人の若いリベラル層が増えている>

伝統的に共和党寄りの「赤い州」として知られてきたテキサス州が、2020年の米大統領選では民主党支持の「青」に転じるかもしれない。同州の共和党や民主党系世論調査会社は、好景気に惹かれて移住してきた主として白人の有権者たちの存在がその背景にあるという。

<参考記事>露骨すぎる米共和党の民主党支持者差別(パックン)

リック・ペリー前知事など共和党の政治家たちは長年、テキサス州の経済が2008年の金融危機にも負けずに成長を遂げたことを「テキサスの奇跡」と自慢してきた。だがその奇跡の一部であるエネルギー産業とテック産業の好況が、これまで多かったキリスト教保守派ではなく、リベラル派の有権者を引きつけているのは皮肉なものだ。

左派寄りのシンクタンクや共和党のストラテジストたちはいずれも、2020年の選挙でテキサス州を「青」に変える有権者層がいるとすれば、それはヒスパニック系住民ではなく、若い白人のリベラル派だと指摘する。

リベラル系シンクタンク「アメリカ進歩センター」のルイ・テシェイラは、ブルームバーグのインタビューに対して「ヒスパニック系住民の増加が大きな注目を集めているが、問題はそこじゃない」と語った。「過去20年のテキサス州の変化を理解するには、白人の人口の推移にこそ目を向けるべきだ」

全米2位の大票田

テキサス州は、大統領選の勝利に必要となる大統領選挙人の数がカリフォルニア州に次いで2番目に多く、これまでに同州を制した民主党の大統領候補はジミー・カーター元大統領だけだ。だが近年は左傾化が進んでいる。長年共和党を支持してきた同州ウィリアムソン郡では、2018年の中間選挙の連邦上院選で、民主党のベト・オルーク候補の得票数が、共和党の現職テッド・クルーズよりも6000票以上多かった。

「仕事目当てで移住してきた人々の中には、共和党員でも保守派でもない人もいる」と、共和党の活動家であるナンシー・ラージは言う。「これまでの実績に安心してはいられない。戦わなければ」

ドナルド・トランプ大統領は2016年の大統領選の際、前述のウィリアムソン郡で民主党のヒラリー・クリントン候補より2万票以上多くの票を獲得。クリントンに9ポイントの得票差をつけてテキサス州を制し、今も同州の共和党員の70%の支持を得ている。

<参考記事>共和党はなぜトランプを見限らないのか

テキサス州の経済は、減税や企業の規制緩和、企業に有利な法制度改革といった企業寄りの政策に下支えされている。だが共和党によるこうした政策が生み出したエネルギー産業とテック産業の好況が、逆に幅広いリベラル派の大卒有権者たちをテキサス州に引きつけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中