最新記事

弾劾

共和党はなぜトランプを見限らないのか

2017年5月17日(水)21時15分
マックス・ブート (外交問題評議会シニアフェロー、国家安全保障が専門)

いつまでトランプに従うのか(左はマイク・ペンス副大統領、右はポール・ライアン下院議長) Jim Lo Scalzo-REUTERS

<司法妨害の証拠は出そろった。この一週間でトランプが自ら開陳してくれた。それでも、議会多数派の共和党が動かない限り、弾劾手続きは始らない>

ドナルド・トランプ米大統領について書くのは大変だ。毎日のように問題を起こすので、追いつかない。最近はとくに極端だ。

ワシントン・ポスト紙は5月15日夜、トランプがホワイトハウスでロシア外相とロシア大使に国家の最高機密を漏洩した、とスクープした。翌16日には、ロシアとの関係について嘘をついたとして就任後すぐに大統領補佐官(安全保障担当)を辞任したマイケル・フリンに関し、トランプがFBIに捜査中止を要請したことも明らかになった。「いい人間なんだ」と、トランプは言ったという。

【参考記事】トランプ、最高機密をロシア外相らに話して自慢

これらの報道をめぐり、アメリカ政界はいま大騒ぎになっている。メディアでも、「ホワイトハウスの危機」「合衆国憲法の危機」など終末的な見出しが躍るようになった。しかし、忘れてはいけない。トランプの最大のスキャンダルは、先週ジェームズ・コミーFBI長官を解任したことだ。

コミーは、昨年の大統領選の最中、トランプを勝たせるために選挙介入したロシアと、トランプ陣営が連携していたかどうかについて捜査していた。解任は捜査妨害ではないか、と疑われたが、トランプは2日後にNBCのインタビューでそれを認めるような発言を自らした。「実際のところ、(解任を)決めたときはこうに思っていた。『ロシアとトランプが共謀しているという話は、でっち上げた。選挙に負けた民主党の言い訳だ』とね」

【参考記事】トランプのロシア疑惑隠し?FBI長官の解任で揺らぐ捜査の独立

同じインタビューでトランプは、トランプ自身が捜査の対象になっているかどうかを、少なくとも3回にわたってコミーに尋ねたと明かしている。

忠誠を誓わなければ解雇!

1月にコミーと食事をしたときは、トランプに忠誠を誓わなければFBI長官を失うことになると威嚇した、という話も浮上した。トランプはFOXニュースに対し、コミーに個人的な忠誠を求めたことはないと否定したが、その後、たとえそうしたとしても「不適切」ではないと発言した。

その上、トランプはコミーに対し、マフィアさながらの脅しをかけた。「ジェームズ・コミーは、メディアに情報を漏らす前に、会話の『録音テープ』があると思ったほうがいい!」──そうツイートしたのだ。

ドナルド・トランプは、司法妨害をした初めての大統領ではないが、それを公の場で自慢した初めての大統領だ。

トランプがロシアと共謀し、選挙結果に影響を与えたかどうかはもはや問題ではない。アトランティック誌のデービッド・フラムも書いているように、それを証明するのは困難で、起訴するのはさらに難しい。しかしトランプはいまや、衆目のなかで司法を妨害し、証人を威嚇している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:仏新首相、富裕税が政権の命運左右 202

ワールド

原油先物は小動き、週間では2週連続の上昇へ

ワールド

米北東部7州とNY市、独自のワクチン推奨で連携 政

ワールド

米つなぎ予算案、19日可決か 下院議長「必要な票あ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中