最新記事

遺伝子情報

タブーを超えて調査......英国での「極端な近親交配」の実態が明らかに

2019年9月10日(火)15時00分
松岡由希子

英国人45万人の遺伝子情報が分析された......(イメージ) annebaek-iStock

<豪クイーンズランド大学の研究チームは、英国人およそ50万人の遺伝子情報のデータベースを用い、「極端な近親交配」について分析した......>

近親交配は、両親の血縁が近いため、両者が有する共通の劣性遺伝子が子に伝わって発現する可能性が高く、先天性疾患などが起きやすくなると考えられてきた。しかし、長年の文化的なタブーであり、違法と定める国もあることなどから、その調査は難しく、近親交配の実態や健康に及ぼす影響について、まだ十分に明らかにされていない面がある。

約0.03%(3652人あたり1人)が「極端な近親交配」によって生まれた

豪クイーンズランド大学の研究チームは、英国人およそ50万人の遺伝子情報が登録されている「バイオバンク(UKB)」のデータベースを用い、1938年から1967年に生まれたヨーロッパ系の45万6426人を対象に、第一度近親者(親子、きょうだい)間もしくは第二度近親者(祖父母、孫、おじ、おば、おい、めい)間の「極端な近親交配(EI)」について分析した。

2019年9月3日にオープンアクセス誌「ネイチャーコミュニケーションズ」で発表した研究論文によると、対象者のうち、男性65名、女性60名の合わせて125名が、第一度近親者もしくは第二度近親者の間に生まれた子であることを示す遺伝子情報を有していた。

この分析結果をふまえ、研究チームは、「1938年から1967年に英国で生まれたヨーロッパ系のうち、約0.03%(3652人あたり1人)が『極端な近親交配』によって生まれた子であると推定される」と述べている。

健康に与える影響は......

研究チームでは、「極端な近親交配」が健康に与える影響についても分析した。その結果、「極端な近親交配」と肺機能、視力、認知機能などの低下との間に関連が認められた。また、「極端な近親交配」によって生まれた子は、あらゆる種類の疾病にかかるリスクが高まることもわかった。

「バイオバンク(UKB)」に登録されている人は、概ね、他の英国人に比べて健康で、教育水準の高い人であることから、研究チームは、この研究で示した推定値について「実際よりも低く偏っている可能性がある」との見方を示し、「『極端な近親交配』をより正確に定量化するためには、大規模な研究が必要だ」と指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中東紛争4日目、攻撃広がり犠牲増加 想定以上に作戦

ビジネス

ニデック第三者委「永守氏が一部不正容認」、業績圧力

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、2月1.9%に加速 懸念される

ビジネス

中東紛争でインフレ加速も、世界経済への打撃は軽微=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 5
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 6
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中