最新記事

中国

引渡条例撤回でも混乱収まらぬ香港 中国はなぜ手出しできないのか

2019年9月10日(火)12時21分

香港の民主化を求めるデモが長期化し、暴力的な様相が濃くなる一方なのに対し、中国政府は強硬手段による介入を辞さない姿勢を明確に打ち出している。写真は香港の金融地区。7月撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)

香港の民主化を求めるデモが長期化し、暴力的な様相が濃くなる一方なのに対し、中国政府は強硬手段による介入を辞さない姿勢を明確に打ち出している。このため、政治・経済面で香港の将来への不安が高まっている。

中国側が軍による介入に乗り出せば、「安定した国際金融センター」「世界から中国本土への投資の玄関口」といった香港の地位は深刻なダメージを受けかねない。中国本土ではどの都市も、たとえ上海でさえ、近い将来に香港の役割を果たすことはできないだろう。

そこで中国本土が香港から受けている恩恵や、現在の枠組みが崩れた場合のリスクなどをまとめた。

中国はなぜ今のままの香港が必要なのか

中国が依然として厳格な資本規制を実施し、しばしば金融市場や銀行システムに介入するのに対して、香港は世界有数の開放的な市場であり、株式と債券の資金調達の場としても最大級だ。

香港の経済規模自体は中国本土の2.7%程度と、1997年の中国への返還時の18.4%から低下したかもしれない。しかし世界水準の金融システムと法体系があるからこそ、経済規模以上の存在感を放っている。

そしてこうした仕組みを運営できるのは、「一国二制度」という独特の統治制度のおかげだ。この制度の下で、香港には中国本土にない表現の自由や独立的な司法などの自由が保障され、それによって、中国政府とは別個に貿易や投資に関する協議ができる国際的な地位を手にしている。例えば、米国が中国製品に課している関税は、香港には適用されない。また外国投資家は、共産党支配を支える中国本土の法体系よりも、香港の法体系に信頼を置いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.6万件減の19.9万件

ビジネス

医薬品メーカー、米国で350品目値上げ トランプ氏

ビジネス

中国、人民元バスケットのウエート調整 円に代わりウ

ワールド

台湾は31日も警戒態勢維持、中国大規模演習終了を発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中