最新記事

医薬品

インド製ジェネリック薬品の恐るべき実態

FROM INDIA WITH LIES

2019年9月5日(木)18時30分
キャサリン・イバン(ジャーナリスト)

現在、アメリカでの処方薬の90%は安価なジェネリックだ。大半は外国で製造されている。そして全医薬品の有効成分の80%が、中国とインドで生産されている。医薬品の国産から外国産への移行は、この20年くらいの現象だ。FDAの査察数を見ると、2005年には国外が国内を上回るようになった。一見したところ、外国の製薬会社とアメリカの消費者はウィンウィンの関係になる。外国企業は世界最大のアメリカ市場に参入でき、アメリカの消費者は効能が同じで安価な医薬品を手に入れられる。

drug02.jpg

アメリカでの処方薬の9割はジェネリックでその大半は外国産 LARRY WASHBURN/GETTY IMAGES

ところが外国製の薬の品質に問題が浮上し、消費者の不安をかき立てている。毒性のある不純物や危険な微粒子が混入し、未承認の成分が使われていることが発覚した。アメリカに届いているのは、先発医薬品とは中身が異なるジェネリック。この1年だけでも、一部の高血圧治療薬に発癌性の疑われる成分が含まれていたため、リコールを命じられている。

FDA向け「査察ツーリズム」

FDAは「グローバルな警戒」を怠らず、「ジェネリック医薬品の製造元には世界同一の基準と査察を求めている」と主張する。アメリカ市場への参入を望むなら定期的な査察を受け入れ、FDAの厳しい基準に従わなければならないということだ。

しかしラルは、これらを無視するインド企業を発見した。FDAは国内では抜き打ちで査察を行う。だが外国では、ビザの取得やアクセスの問題で数週間前、あるいは数カ月前に査察の実施を通告するのが普通だという。偽装するには十分な時間だ。

「工場は従業員に社内用のメモや覚書を回し、FDAの査察に備えてデータをごまかすよう指示している」と、ラルはFDA本部(米メリーランド州)に報告した。査察が事前通告されていれば、さまざまな準備が可能だ。査察チームが泊まるホテルの従業員も、彼らの日程を企業側に伝えていた。

そして企業は買い物やゴルフ、タージ・マハル観光などで査察官を接待漬けにした。そんな「査察ツーリズム」で、査察官は「囲い込まれ、企業側の言いなり」になっていたわけだ。こうした腐敗を一掃するため、ラルは一計を案じてFDA本部に掛け合った。査察日程の事前通知や企業側に旅程を組ませる慣行を廃止し、インドでの査察は全て直前の通知(あるいは通知なし)で行うという提案だ。

2013年12月、ついにFDAがゴーサインを出した。ラルはさっそく抜き打ち査察の準備にかかった。まず消費者安全監督官のアトゥル・アグラワルに、アメリカから来る査察チームとの連絡業務の一切を委ね、いつ誰が来るのかが企業側に漏れないようにした。査察チームの旅程もアメリカ大使館を通じて手配し、FDAの現地事務所には知らせなかった。現地の職員は企業側と通じていたからだ。

ニュース速報

ワールド

緊急事態判断、「強いメッセージ」必要と専門家が指摘

ビジネス

ホンダの今期、営業益横ばい見込む 販売回復も原材料

ビジネス

第1四半期末の中国投信販売残高、アントが首位=業界

ビジネス

暗号資産、マスク氏ツイートで乱高下 ビットコイン週

MAGAZINE

特集:新章の日米同盟

2021年5月18日号(5/11発売)

台頭する中国の陰で「同盟国の長」となる日本に課せられた新たな重い責務

人気ランキング

  • 1

    パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ」と謝罪

  • 2

    日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大学などの研究で判明

  • 3

    インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの、償われることのない重罪

  • 4

    【動画】ゲームにあらず、降り注ぐロケット弾を正確…

  • 5

    コカ・コーラ、マッキンゼー、ソニー...... ミャンマー…

  • 6

    インドで新型コロナ患者が、真菌感染症(ムコール症…

  • 7

    インドの空港倉庫に国際支援物資置き去り 「どこに…

  • 8

    米物価上昇が意味すること

  • 9

    「話すことが苦手だった」メンタリストDaiGoの人生を…

  • 10

    バブルを生きた元証券ウーマンが振り返る日経平均の3…

  • 1

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 2

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇太子に賛否...「彼女に失礼」「ごく普通」

  • 3

    パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ」と謝罪

  • 4

    かわいい赤ちゃんの「怖すぎる」声に、両親もスタジ…

  • 5

    日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大…

  • 6

    ノーマスクの野外パーティー鎮圧 放水銃で吹き飛ば…

  • 7

    プロポーズを断っただけなのに...あまりに理不尽に殺…

  • 8

    金正恩が指揮者を公開処刑、銃弾90発──韓国紙報道

  • 9

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」…

  • 10

    【動画】ゲームにあらず、降り注ぐロケット弾を正確…

  • 1

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツッコミ 「赤ちゃん大丈夫?」「あり得ない」

  • 2

    「お金が貯まらない家庭の玄関先でよく見かける」1億円貯まる人は置かない『あるもの』とは

  • 3

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 4

    親日家女性の痛ましすぎる死──「日本は安全な国だと…

  • 5

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇…

  • 6

    ヘンリー王子、イギリス帰国で心境に変化...メーガン…

  • 7

    韓国、学生は原発処理水放出に断髪で抗議、専門機関…

  • 8

    ビットコインバブルは2021年ほぼ間違いなく崩壊する

  • 9

    パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ…

  • 10

    知らない女が毎日家にやってくる──「介護される側」…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月