最新記事

中国

香港キャセイ・パシフィック社員がおびえる中国の「恐怖政治」

2019年8月23日(金)09時29分

中国は政治弾圧や解雇、スマートフォンの検査など、「白色テロ」を仕掛けてきている──。写真は香港の空港で2016年5月に行われたキャセイ・パシフィック航空のイベントで撮影(2019年 ロイター/Bobby Yip)

中国は政治弾圧や解雇、スマートフォンの検査など、「白色テロ」を仕掛けてきている──。香港デモを巡る中国政府の対応に、キャセイ・パシフィック航空の操縦士や客室乗務員らが恐怖を募らせている。

キャセイは中国の要請に応じ、デモに参加した操縦士2人を解雇したのに続き、ルパート・ホッグ最高経営責任者(CEO)が先週辞任した。

民主派弁護士でもある別の操縦士ジェレミー・タム氏は20日、内部の政治圧力に耐えかねて自身とその他従業員が退職したと明かした。同氏は自身のフェイスブックのページに「(中国民用航空局が)香港に手を伸ばし、地元航空会社に直接圧力をかけたことは、紛れもない白色テロだ。政治裁判のせいで、第一線で働く社員からCEOまでが退職した」と記した。

白色テロとは、権力者側による敵対勢力への直接行動を指すもので、香港では恐怖感を生む匿名行動を表すのによく使われる表現だ。

従業員8人へのインタビューと、従業員専用の2種類のフェイスブックページへの投稿によると、ホッグCEOの辞任は、従業員2万7000人の同社全体を恐怖に陥れたという。

地域子会社キャセイ・ドラゴンの客室乗務員は「わが社で白色テロが起こっている。私たちはちょっとしたおしゃべりですら、政治的な話をするのを非常に警戒している」と話す。

「中国政府寄りの人々の中には、ソーシャルメディア上でデモ支持者を発見しては、住所や電話番号などの個人情報をテレグラム上に作ったグループにアップしている人たちがいる」という。テレグラムとはメッセンジャーアプリだ。

中国民用航空局は9日キャセイに対し、中国本土行きの航空便の乗務員について身辺情報の申告を義務付けるとともに、デモに関わった職員が本土での運航に携わるのを禁じると通知した。

従業員5人によると、それ以来本土に着陸する乗務員は当局からかなり踏み込んだ形の検査を受けている。

ある操縦士はロイターへのテキストメッセージで、「検査員は操縦士と客室乗務員のスマホを調べ、反中国の素材がないか、ワッツアップのメッセージやフォトアルバムまでチェックしている」と打ち明けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中