香港キャセイ・パシフィック社員がおびえる中国の「恐怖政治」
中国は政治弾圧や解雇、スマートフォンの検査など、「白色テロ」を仕掛けてきている──。写真は香港の空港で2016年5月に行われたキャセイ・パシフィック航空のイベントで撮影(2019年 ロイター/Bobby Yip)
中国は政治弾圧や解雇、スマートフォンの検査など、「白色テロ」を仕掛けてきている──。香港デモを巡る中国政府の対応に、キャセイ・パシフィック航空の操縦士や客室乗務員らが恐怖を募らせている。
キャセイは中国の要請に応じ、デモに参加した操縦士2人を解雇したのに続き、ルパート・ホッグ最高経営責任者(CEO)が先週辞任した。
民主派弁護士でもある別の操縦士ジェレミー・タム氏は20日、内部の政治圧力に耐えかねて自身とその他従業員が退職したと明かした。同氏は自身のフェイスブックのページに「(中国民用航空局が)香港に手を伸ばし、地元航空会社に直接圧力をかけたことは、紛れもない白色テロだ。政治裁判のせいで、第一線で働く社員からCEOまでが退職した」と記した。
白色テロとは、権力者側による敵対勢力への直接行動を指すもので、香港では恐怖感を生む匿名行動を表すのによく使われる表現だ。
従業員8人へのインタビューと、従業員専用の2種類のフェイスブックページへの投稿によると、ホッグCEOの辞任は、従業員2万7000人の同社全体を恐怖に陥れたという。
地域子会社キャセイ・ドラゴンの客室乗務員は「わが社で白色テロが起こっている。私たちはちょっとしたおしゃべりですら、政治的な話をするのを非常に警戒している」と話す。
「中国政府寄りの人々の中には、ソーシャルメディア上でデモ支持者を発見しては、住所や電話番号などの個人情報をテレグラム上に作ったグループにアップしている人たちがいる」という。テレグラムとはメッセンジャーアプリだ。
中国民用航空局は9日キャセイに対し、中国本土行きの航空便の乗務員について身辺情報の申告を義務付けるとともに、デモに関わった職員が本土での運航に携わるのを禁じると通知した。
従業員5人によると、それ以来本土に着陸する乗務員は当局からかなり踏み込んだ形の検査を受けている。
ある操縦士はロイターへのテキストメッセージで、「検査員は操縦士と客室乗務員のスマホを調べ、反中国の素材がないか、ワッツアップのメッセージやフォトアルバムまでチェックしている」と打ち明けた。