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中国、香港デモ参加者大量逮捕の手に出るか

2019年8月20日(火)06時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

この最後のフレーズには「秋の蝉の鳴き声、夕暮れに沈む陽」という、南宋の詩人・趙彦端の作品からの一節が引用されているが、これは「秋の蝉の命は短い」=「一日がまもなく終わる」=「(香港の)暴徒らの先はない、そろそろ終わるんだよ」ということを言おうとしている。

首謀者を逮捕して終わらせる

この報道の中で最も気になったのは最後にある「法と正義の審判」という言葉だった。

そこで中国政府の元高官に、これは具体的に何を指すのかを聞いてみた。

すると「逮捕です!主たるデモ首謀者たちを全て逮捕するのです」という回答が即座に戻ってきた。

「15日に国務院新聞弁公室が何を発表したか、ご存じでしょう?」と念を押された。

もちろん知っている。知っているだけでなく、これは何かをやるためのシグナルだなと思いながら、その動向を注意深く観察していた。

8月15日、国務院新聞弁公室は中国政府のために話をすることのできる法律家8名を集めてブリーフィングを行った。香港のデモを法律的にどのように位置づけるかに関する見解を述べさせたのである。タイトルは「如何にして香港の覆面暴徒に対応するか:フランスに学べ」だ。

その中の一人がフランスの「黄色いベスト運動」を例にとって説明したのが印象的だった。

「黄色いベスト運動」は2018年11月から始まり、今年6月まで約半年間にわたって続いたフランス政府への抗議運動である。この運動はもともと燃料価格高騰と燃料税引き上げが口火となっていたが、やがて広範な政府あるいは政治への不信運動と広がっていった。黒シャツ、黒マスク集団が暴力的事件を起こしたことから、 「反暴動防止法」が成立し、「(顔を隠しながら)公秩序を乱す行為」などを禁止し、違反する場合は最大1年の監禁と15000ユーロの罰金が課せられるようになった。「だから中国が同等のことを実行しても法的合法性がある」ことを、中国の法律家たちは強調している。つまり、北京政府が何らかの措置をしたところで、それは国際社会から非難されるべきものではないと言いたかったようだ。

8月16日の「中国新聞網」は「香港問題の唯一の解決方法は法治の軌道に戻ることだと専門家が指摘」として、法に基づいて裁くことを主張し、又もや「香港の過激暴力行為はテロの兆しであり、それを摘み取るには法に基づくしかない」と強調している。

しかし、香港のデモを解決する唯一の道は「テロ指定」を目指して「軍を介入させること」でもなければ「デモ首謀者を大量逮捕すること」でもない。唯一の解決方法は「逃亡犯条例」の改正案を撤廃して、林鄭月娥行政長官が辞任することではないのか――。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。


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