最新記事

人権問題

香港境界で中国武装警察が演習 抗議デモ隊をけん制

2019年8月15日(木)18時11分

中国深圳にある香港との境界に近い競技場で中国人民武装警察(武警)が演習を実施しているのが確認された。香港で続いている「逃亡犯条例」改正案を巡る抗議活動に対するけん制とみられる(2019年 ロイター/Thomas Peter)

中国深圳の香港との境界に近い競技場で15日、中国人民武装警察(武警)が演習を実施しているのが確認された。香港で続いている「逃亡犯条例」改正案を巡る抗議活動に対するけん制とみられる。香港に駐在する西側およびアジア諸国の外交関係者は、中国政府が人民解放軍や武警を香港に投入しようとは考えていないとみている。

すでに米国務省が、武警が香港との境界近くに集結していると指摘し懸念を表明している。

深圳の競技場からは、迷彩服姿の男性らが声を挙げたり、警笛の音が聞こえた。競技場の駐車場は100台以上の武警関係車両で埋め尽くされ、ホールローダーが少なくとも3台、放水砲を搭載した車が2台あった。

中国国営メディアはこれまでに何度か深圳での演習を伝えている。

人民日報傘下の環球時報は今週、軍用車の車列が深圳市内を走行する動画を公開。

人民日報は、ソーシャルメディアの微博(ウェイボー)に、武警は騒乱やテロリスト攻撃に対応すると投稿した。

今のところはプロパガンダ

香港駐在の外交関係者は、中国指導部は、人民解放軍などを香港に投入すれば、国際社会から「一国二制度」への信頼を失い、制裁につながると十分認識していると指摘する。

ある西側の外交高官はロイターに「中国側が行動をエスカレートさせているのは、香港と中国本土にメッセージを送る狙いとみられる。それでもまだプロパガンダの域にとどまっている」と語った。

国際戦略研究所(IISS)のシンガポール駐在安全保障アナリスト、アレクサンダー・ニール氏は、軍の介入は「香港政府や警察も手に負えない、中国の国益が脅かされるような」はるかに深刻な事態にならなければ起こらないと指摘。深刻な事態として、香港で中国政府高官が暗殺ないし誘拐されたり、中国政府出先機関が占拠されたりすることなどを挙げた。

[深圳(中国)/香港 15日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、60日間の一時停戦案を承認 人質・囚人交換

ワールド

米ウクライナ首脳会談開始、安全保証巡り協議へとトラ

ワールド

ロシア、ウクライナへのNATO軍派遣を拒否=外務省

ビジネス

トランプ政権、インテル株10%取得巡り協議中と報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する現実とMetaのルカンらが示す6つの原則【note限定公開記事】
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中