最新記事

映画

輸出規制に揺れる韓国サムスン、半導体の映画を公開 白地に赤い幽霊の意味は?

2019年8月13日(火)20時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

輸出規制で苦境に立つサムスンが映画を作る

このように、日本と比べれば短編映画に触れる機会が少なからず高い韓国で、最近1本の短編映画に注目が集まっている。電子機器メーカーサムスン電子の作った『メモリーズ』(キム・ジョングァン監督)である。

サムスンはこの作品を含めて3作の短編映画を製作しており、You Tube/ネイバー/カカオTVなどの動画サイトのサムスン公式アカウントを通して誰でも無料で視聴できる。これら短編映画作品は、もちろんサムスンのプロモーションとしての役割が与えられており、1作ごとにサムスンの製品がモチーフになっている。

2017年に公開された1作目『Two Lights: Relúmîno』は、視覚障碍者向けの視覚補助アプリケーションを上手くストーリーに取り込んで、視覚障害をもつ若い男女の恋の始まりを描いている。監督は『八月のクリスマス』や『春の日は過ぎゆく』のホ・ジノが担当した。

翌年発表された2作目の『My Dream Class』は、サムスンが取り組む教育支援がテーマだ。離島など、都会と同じようには塾などに通えない子供たちの元へ大学生の教師を派遣し、教師を無事務めた大学生には奨学金を贈呈するという実際の教育プログラムを元に、英語を教えに来た主人公の男子学生と、島の個性豊かな6人の生徒たちとの交流を描いたコメディ作品が完成した。『トンマッコルへようこそ』のパク・クァンヒョンがメガフォンを取っている。そして、今年サムスンが発表したの新作が『メモリーズ』だ。

今回、なぜこの『メモリーズ』が大きな注目を集めているかというと、作品で取り上げたサムスン製品が「半導体」だからだ。現在、"ホワイト国除外"で大きく揺れている日韓関係だが、その輸出規制で韓国側が影響を受けるといわれているのが半導体製品だ。

この映画が公開されたのは7月25日。ちょうど前日24日には世界貿易機関(WTO)の一般理事会で、韓国側が「日本の輸出規制はWTOのルールに違反する」と各国代表に訴えるということがあって、タイミングが重なった。半導体がテーマだということで公開前から一部ネットなどで話題になり、公開3日目には再生回数1000万回を記録。8月12日現在You Tubeの再生回数は3670万回を超えている。韓国の人口が約5100万人ということを考えると、この再生回数の凄さが分かる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

11月の完全失業率は2.6%で前月と同水準、有効求

ワールド

シリア、来年から新紙幣交換開始 物価高助長との懸念

ワールド

米、ナイジェリア北西部でイスラム過激派空爆 トラン

ワールド

ロシア、LNG増産目標達成を数年先送り 制裁が影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中