最新記事

ブレグジット

合意なき離脱「ハードブレグジット」は防げるか 英議会と首相、対決の構図

2019年8月13日(火)15時24分

ジョンソン英首相は、英国の欧州連合(EU)離脱を巡って議会との対決が必至となっている。写真は1月28日、ロンドンで撮影(2019年 ロイター/Hannah McKay)

ジョンソン英首相は、英国の欧州連合(EU)離脱を巡って議会との対決が必至となっている。

ジョンソン氏は、EUが離脱条件の再交渉に応じない場合、期限の10月31日に合意なしに離脱すると述べており、一部議員はそれを阻止する決意だ。

想定される議員の動きと、それに対する対抗措置をまとめた。

◎早期選挙

議会では、合意なき離脱に反対する勢力が過半数をわずかに超えており、不信任決議の採決により政権を崩壊させることが可能だ。

早期選挙となった場合、EU離脱の延期もしくは離脱撤回を目指す新政権が発足する可能性がある。しかしジョンソン氏には、離脱期限の10月31日以降まで総選挙を先送りする権限がある。

◎代替政権

政府が不信任投票で敗れた場合、法律では新政権を樹立することができるのは14日以内と定められている。

不信任決議に賛成した議会過半数の議員が代替政権を形成した場合、同政権は離脱日の延期を試みる可能性がある。

こうしたことを可能にした法律は2011年に導入されて以来、このような形で試行されたことはない。14日という期間がどう機能するのか、その間だれがどのような権限を持つのかが正確に定義されていないとの批判もある。

ジョンソン氏は辞任の義務はないと主張し、総選挙が発動されるまで踏みとどまった上で、10月31日以降に選挙を実施する可能性がある。

◎ジョンソン首相は辞任を拒めるか

法律と政府慣例について記した文書は、14日の間に「首相が下院の信任を失い、かつ代替政権が信任を得ていることが明確であれば、首相は辞任するよう期待される」となっている。

しかし、この法律の起草責任者だったスティーブン・ローズ氏によると、憲法が成文化されていない英国で大半の物事がそうであるように、この規則にも解釈の余地があり、政治力に左右され、裁判所が実施を命じるのは難しい。

英首相はエリザベス女王が任命し、形式上は罷免することもできるが、実行すれば王室は政治に関与しないという慣習が破られることになる。

ジョンソン氏は、合意なき離脱阻止だけを目的に形成された代替政権は真の政権ではないと主張する可能性がある。

専門家は、ジョンソン氏が辞任を拒めば法的な異議申し立てが行われると予想している。行動を起こすべきは議会だ、との見方もある。

JPモルガンはノートで「不信任決議が可決され、代替政権が明確になってもジョンソン首相が辞任しない場合、『憲法上の危機』が起こる」と指摘。「われわれの見方では、ジョンソン氏の言い分は通りそうにない。しかし議会メンバーが力強く行動を起こし、同氏に代わる首相がだれなのか明確にする必要がある」とした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ツバル首相が台湾訪問、「特別な関係を大切にしている

ビジネス

債務対GDP比下げ財政持続を実現、市場の信認確保=

ワールド

中国、高市首相答弁の撤回要求 日中外務高官協議

ビジネス

高市首相と会談、植田日銀総裁「利上げは今後のデータ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中