最新記事

香港

危険増す香港デモ 天安門事件の「戦車男」を彷彿とさせる瞬間

Viral Photo of Hong Kong Protestor Sparks Tiananmen Square Comparisons

2019年8月27日(火)16時00分
アリストス・ジョージャウ

警官に銃口を向けられ両手を広げる男性(手前)(8月25日、香港セン湾区)  Tyrone Siu-REUTERS

<警察官が丸腰の男性に銃口を向ける写真がまるで、天安門事件で戦車の前に立ちはだかった「戦車男」の男性のようと話題に>

香港のデモを撮影したある写真が、1989年の天安門事件を象徴する「戦車男」の写真を彷彿とさせると話題を呼んでいる。

米ニューヨーク・タイムズ紙の取材でカメラマンの林亦非が撮影した問題の写真は、暴動鎮圧用の武装をした警察官が道路の真ん中で、丸腰の男性に銃口を向けている瞬間だ。男性は片手に傘を握り、両手を広げて立っている。

写真は8月25日夜、香港のセン湾地区で警察とデモ隊が衝突した際に撮影された。この時、警察官1人がデモ隊を威嚇するために空に向けて発砲したと報じられている。オンライン新聞の香港フリー・プレスによれば、約12週間前に始まった一連のデモで実弾が発砲されたのはこれが初めてだ。

またニューヨーク・タイムズは、この衝突の際、棒や金属パイプを手に迫ってきたデモ参加者の集団に対して、警察官数人が銃を抜く場面があったと動画つきで報じた。動画には、警察官1人が集団の先頭にいるタンクトップ姿の中年男性に銃口を向け、さらに「撃たないでくれ」と懇願するように地面に膝をついた男性を蹴る場面も映っている。この蹴られた男性が、林亦非の写真に映っていた男性とみられている。

放水銃も導入され暴力がエスカレート

英タイムズ紙によれば、同地区の抗議デモではこれまで、参加者が警察官に向けてレンガや火炎瓶を投げるなどしており、警察は催涙ガスやプラスチック弾で応戦してきた。過去2週間のデモは比較的穏やかなもので、25日のデモも当初は平和なデモ行進だったが、同日夜には警察が初めて放水銃を導入するなど暴力がエスカレートした。

デモ行進に参加した看護師のセリーヌ・ウォン(38)は同紙に対して、「学生たちはレンガを投げたりしているが、そういうやり方には賛同できない」と語った。「でも政府の暴力に比べれば、彼らの暴力もたいしたことはない」

同じくデモに参加したロリー・ウォンは、平和なデモでは政府に何も衝撃を与えることができていないから、一部のデモ参加者は暴力に訴えているのだと語った。「暴力の拡大は、香港市民に対する自治政府の無関心の結果だ」と彼は米CBSニュースに語った。

香港警察は、銃を抜いた警官たちの行動は正当だと擁護している。余铠均警視正は26日に行った記者会見で次のように語った。「6人の警察官が銃を抜いたが、それは自分の命が危険にさらされていたからだ。彼らは自分や、その場にいたほかの警察官や市民を守るために銃を抜いた。1人の警察官が空に向けて発砲したが、弾は誰にもあたっていない」

同警視正はまた、タンクトップ姿の男性に銃口を向けた警察官が男性を蹴ったことについても、「当然の対応だった」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

アングル:「暑さは人を殺す」、エネルギー補助削減で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 10
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中