最新記事

教育

日本の教員は世界一の長時間労働なのに、そのうち授業時間は半分以下

2019年7月17日(水)17時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本のように教員の授業時間が勤務時間の半分にもならない国は先進国では他にない svetkd/iStock. 

<先進国の国際比較で、日本の教員の勤務時間は最も長いが、授業時間は国際平均より短い>

OECD(経済協力開発機構)の国際教員調査「TALIS 2018」の結果が公表された。教員の労働実態を調べた調査だが、注目されるのは教員の労働時間だ。

日本の中学校教員(フルタイム勤務者)の勤務時間を見ると、全体の56.7%が週60時間以上働いている。イギリス28.9%、アメリカ22.0%、韓国7.8%、スウェーデン2.9%、フランス2.6%にくらべて著しく高い。平均値にすると週59.3時間で、こちらも先進国では最も高い。

横軸に週間の平均勤務時間、縦軸に週60時間以上勤務している者の割合をとった座標上に、調査対象の47カ国を配置すると<図1>のようになる。

data190717-chart01.jpg

日本のドットは右上にぶっ飛んでいる。横軸、縦軸とも群を抜いて高いからだ。2013年調査でも同じようなグラフになったが、2018年でも変わっていない。教員の過重労働が世界一の国だ。

外国から見れば、「熱心に授業をしているから、国際学力調査でいつも上位なのか」と思われるかもしれない。しかし授業時間(準備含む)の週平均は27.4時間で、対象国の中では28位だ。

週の勤務時間は59.3時間で、うち授業時間は27.4時間。授業の割合は46.2%となる。日本の中学校教員では、授業の比重は半分にもならない。教員の本務が授業であることを思うと疑問符がつく。

data190717-chart02.jpg

<図2>を見ると、日本は総勤務時間(横軸)が最も長いにもかかわらず、授業時間(縦軸)は国際平均より短い。授業時間の割合が半分にも満たないが、こういう国は他にない。斜線は授業時間の割合だが、イギリスやスウェーデンでは勤務時間の6割、韓国とフランスでは7割、アメリカでは8割が授業となっている。南米のチリやブラジルでは9割を超える。教員の仕事は授業という割り切りが強いようだ。

日本の教員の勤務時間は世界一長いが、その半分は授業以外の業務に食われている。会議、事務作業、生徒指導、部活指導......。思い当たる業務は数多くあるが、部活指導を教員が担当するのは日本の特徴だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中