最新記事

害虫

あらゆる殺虫剤に耐性を持つゴキブリが激増中

Cockroaches One Step 'Closer to Invincibility' Due to Bug Spray Resistance

2019年7月3日(水)18時15分
ジェイソン・マードック

なかなか死なないゴキブリ。殺虫剤は、効かないかすぐに効かなくなる 8e88graphic/iStcok.

<ゴキブリが耐性をもたない殺虫剤を使って駆除実験したところ、ゴキブリはわずか一世代で耐性を付け、個体数も増やし始めた。驚異の生命力に、近い将来殺虫剤では殺せなくなるかもしれないと、研究者は警告する>

害虫駆除業者が使う殺虫剤に対するゴキブリの耐性が増しており、近い将来、ゴキブリを化学薬品だけで抑え込むのは「ほぼ不可能」になるかもしれない、と研究者らが警告している。

インディアナ州ウェストラファイエットにあるパデュー大学が最近発表したこの研究は、チャバネゴキブリの一種を対象にしている。世代を重ねるごとに、人間による個体数抑制の試みに対して耐性を身につけつつあり、今後ますます駆除が難しくなる恐れがあるという。

ゴキブリは人間の健康に害を与える害虫なので、個体数の抑制は重要だと、科学者たちは指摘する。

<参考記事>この虫を見たら要注意!大量発生で農作物や木を枯らす害虫が拡散中

<参考記事>ネズミの地球侵略が始まった

この研究を率いたパデュー大学の昆虫学教授マイケル・シャーフは、「これまで把握されていなかった問題だ」と言う。「ゴキブリは、複数の殺虫剤に対する耐性を一度に身につけつつあり、このままだと化学薬品だけで抑え込むのは不可能になる恐れがある」

フロリダ大学の食料農業科学研究所では、今回の研究対象となったチャバネゴキブリは、ゴキブリのなかでも最も人間に知られた種類だという。「人間や人間の生活圏を離れては生きていけず」、食べ物や水に近い暖かい室内で繁栄する。

殺虫剤の効果検証をしてみたら

パデュー大学の研究者によると、これまでこうしたゴキブリの増殖を抑えてきた殺虫剤は、複数の薬剤を組み合わせて使うタイプで、そのうち少なくとも一つが効力を発揮してゴキブリを殺してくれれば成功、という仕組みだった。今回の実験は、こうした殺虫剤の効果の検証を目的に行われた。

実験は、インディアナ州のインディアナポリスとダンビルという2つの街の住宅地にあるアパートで実施された。また、殺虫剤はユニバー・ソリューションズから購入したものを用いたと、論文には記されている。

最初の実験では、3種類の殺虫剤を6カ月間、交互に使った。第2の実験では、2種類の殺虫剤を混ぜたものを6カ月使った。そして第3の実験では、開始時点でゴキブリが耐性を完全には獲得していないとわかっていた1種類の殺虫剤を、6カ月使用した。

第1の実験では、個体数を最初のレベルに抑えることはできたが、減少させるまでには行かなかった。2種類の殺虫剤を混ぜて使う第2の実験では、どちらの殺虫剤も効果がなく、すぐに個体数が増加し始めた。しかし、最も予想外だったのは、第3の実験結果だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中