最新記事

生態系

ネズミの地球侵略が始まった

Climate Change Could Mean Rat Boom: Scientists

2018年11月5日(月)16時10分
ベンジャミン・フィアナウ

ニューヨークのアパートの住人の話では、ネズミは大量発生とともにより大きく、図々しくなるらしい Christian Hartmann-REUTERS

<地球温暖化がこのまま進めば、世界中の都市でネズミが大量発生すると、科学者が警告。一部の都市では、既にネズミがの増殖が始まっている>

今のまま地球温暖化が進めば、世界中の都市がネズミにとって絶好の繁殖地になると、科学者らが警告している。

ニューヨーク、シカゴ、ボストンなどアメリカの主要都市は今でも、大量発生したネズミの駆除に毎年数百万ドルを投入している。だがもし気象学者の予測どおり世界の平均気温が今世紀末までに「2度」上昇すれば、暖い冬と猛暑が増えて、ネズミが異常繁殖することになるという。

「ネズミ博士」として知られる米コーネル大学のボビー・コリガン教授によれば、ネズミの妊娠期間は14日。またブルームバーグによれば、ネズミの赤ちゃんは生後1カ月で繁殖できるようになるという。単純計算すれば、1匹のネズミが、1年後には1万5000~1万8000匹に増えるというのだ。

既にその兆しはある。ボストン郊外の保健当局には昨年10月、「水たまりに25~30匹のネズミがいる」という通報があった。同じ頃ニューヨークでも、ネズミが公営住宅を浸食し、住民が悲鳴を上げているという報道があった。「ネズミは丸々と太り、アパートに住み着いている」と、ある住人は言う。

ニューヨーク・ブルックリンにある集合住宅、マーシー・プロジェクトの43歳の住人は、ネズミたちは居心地が良すぎるのか、人間が近寄っても逃げようとさえしない、と語った。「自分の縄張りだとでも言わんばかりに逃げもせず、じっとしている。人間を怖がらないのは異常だ」

米害虫管理協会によれば、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコとオークランド一帯、ワシントンDCは、全米でネズミが多い上位5都市だ。

ネズミ博士から生物学者にいたるまで、科学者たちが、温暖化によるネズミの大量発生を警告したのは今回が初めてではない。米雑誌「ニュー・リパブリック」は昨年、2050年までに世界人口の70%が都市部に住むようになると予想されることから、事態はさらに悪化するだろう、と書いた。

害獣駆除の問い合わせ殺到

2016年の米紙USAトゥデイの記事によれば、米害獣駆除大手オーキンへの問い合わせ件数の増加率は2013年から2015年にかけて、「シカゴで61%、ボストンで67%、サンフランシスコで174%、ニューヨークで129%、ワシントンDCで57%」だった。

ネズミの大量発生は、世界中で確認されている。ニュージーランドの複数の都市では、2017~2018年に記録的な猛暑が続いた影響で、ネズミが急増した。

「ネズミの数が10倍になった地域もある」と、ニュージーランド自然保護省の主席アドバイザー、グレーム・エリオットは英紙ガーディアンに語った。

「ニュージーランドでは1999~2000年にも、ネズミの大量発生でいくつかの希少な鳥が絶滅した。鳥たちが再び巣作りをする来年の春、最悪の結果に見舞われるかもしれない」

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中