最新記事

軍事

ロシア製最先端兵器を買ったトルコから崩れはじめたNATOの結束

Russia May Now Sell Jets to Turkey after U.S. Considers Old Rival

2019年7月19日(金)15時30分
トム・オコナー

対ロシア制裁でアメリカが標的にしたのが、ロシア国防省。その狙いはS400に関心がある諸外国をけん制すること。S400については既にベラルーシ、中国とインドが購入済みだ。イラク、カタール、サウジアラビアなども関心を示していたが、代わりに米国製のTHAAD(高高度防衛ミサイル)システムを購入することにしたようだ。S400はミサイルのみならず航空機の迎撃も可能だが、THAADはミサイルの迎撃のみに特化している。

アメリカは既に、S400とSu35の購入を理由に中国に対して制裁を科している(それでも中国政府は今後もS400とSu35を買い足す意向と報じられている)。同盟国のトルコにも制裁を科すのかどうか、注目だ。

アメリカのF35は、既にオーストラリア、カナダ、デンマーク、イスラエル、イタリア、日本、オランダ、ノルウェー、韓国やイギリスなど多くの国が購入を決定している。7月はじめまで米国防総省のF35プログラム事務局長を務めていた米海軍のマティアス・ウィンター中将は4月、米下院軍事委員会で、将来的には「シンガポールやギリシャ、ルーマニア、スペインやポーランドなどの国も」F35を導入する可能性があると証言した。

トルコと対立のギリシャはF35購入検討

ギリシャの日刊紙カティメリニは6月、情報筋の発言を引用し、ギリシャ政府がF35の購入を真剣に検討していると報じた。地中海東部の天然ガス田をめぐってトルコとの緊張が高まるなか、ギリシャ政府はアメリカと防衛関係を強化したい考えだ。

いずれもNATO加盟国であるギリシャとトルコは長年、対立関係にあるが、トルコ政府が北キプロス沖で石油・天然ガスの掘削を行うと決めたことから、再び対立が激化しつつある。キプロス島は1974年のクーデターによって南北に分断され、北キプロスはトルコが支配、南キプロスはギリシャと密接な関係にある。

EUは、キプロス沖でのガス採掘を理由にトルコに制裁を科しているが、トルコはこれを無視している。この問題は、訪米中のギリシャのニコス・デンディアス外相とマイク・ポンペオ米国務長官の会談でも話題にのぼった。デンディアスは、ポンペオと「キプロス共和国(南キプロス)の主権、およびエーゲ海と東地中海のギリシャの主権に対するトルコの侵略行為」についても話し合った、と語った。

(翻訳:森美歩)

20190723issue_cover-200.jpg
※7月23日号(7月17日発売)は、「日本人が知るべきMMT」特集。世界が熱狂し、日本をモデルとする現代貨幣理論(MMT)。景気刺激のためどれだけ借金しても「通貨を発行できる国家は破綻しない」は本当か。世界経済の先行きが不安視されるなかで、景気を冷やしかねない消費増税を10月に控えた日本で今、注目の高まるMMTを徹底解説します。


ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次

ワールド

トランプ大統領、ベネズエラとの戦争否定せず NBC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中