最新記事

中国経済

中国経済6.2%をどう見るか:中国側の見解

2019年7月17日(水)18時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

Q:まあ、これは驚きました。まさか、中国政府で仕事をしておられた方から、こんなお話をお聞きすることができるとは!

A:いや、まだありますよ。たとえばIPO改革。これだって、改革すると言ってから何年になりますか。中国の株式市場は「傷心の地」と言っても過言ではありません。

(IPOとはInitial Public Offeringの頭文字を取ったもので、未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させることを指す。中国では2013年にIPO改革が提唱されたが、遅々として進んでいない。)

Q:ということは、6.2%の成長は、たしかに容易なことではないと言えるかもしれませんが、中国経済の内部構造にも問題があるということになりますね?

A:その通りですよ。6.2%は悪い数値ではない。ただその内容、成長の質の問題です。これを改善しないと、中国の経済はやがて好ましくない方向に行く可能性があります。

以上が、意外にも中国政府元高官から引きだした「中国批判」である。

思わぬ収穫だったと言えよう。

中国の若者は?

最後に北京にいる若者たちに「最近の景気をどう思っているか」を聞いてみた。若者と言っても、すでに就職している30歳代の人たちだ。

「あまり良くない」、「良くない」、「実力のない者が負け、実力のある者のみ生き残れる」、「リストラされた」などの反応があった。

さらに、以下のような具体例を挙げる者もいた。

1.不動産税法を制定する可能性が大きい。

2.企業税と社会保険の金額が下がるだろうと思う。企業の負担を減らす政策が増えるだろう。

3.不動産の値上がりにより、国民が消費に使える金額はすべて不動産の購入とローンの返済に消えたから、消費はなくなっている。

4.不動産価格が頭打ちになって、不動産の投資価値がなくなりつつある。インターネットはBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などの大手に独占されて、新しい投資の方向を模索している。

5.失業率は既に上昇している。不動産の高騰、教育コストの高騰、経済情勢の悪化などにより、今の90后(1990年以降に生まれた人たち。ジュー・リン・ホウ)は子供を生みたくないし、人口出生率が暴落しています。

若者はなかなか考えているではないか。感想として、実にリアリティがある。

(なお、このコラムは中国問題グローバル研究所のウェブサイトからの転載である。)

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中