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IAEA天野事務局長の死去が示した原子力機関の秘密主義

2019年7月22日(月)19時01分

国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)事務局長が死去した。写真はウィーンで3月撮影(2019年 ロイター/Leonhard Foeger)

国際原子力機関(IAEA)は22日、天野之弥事務局長(72)が死去したと発表した。同日には、病気のため早期に辞任することが発表されると見込まれていた。天野事務局長は2009年に就任。3期目の任期が切れる21年11月30日よりも前の来年3月に辞任する準備を進めていた。

IAEA筋はこれまで、天野氏が22日に自身の決断を表明する方針と明らかにしていた。

IAEAは昨年9月、天野事務局長が医療処置を受けたと発表したが、具体的な内容については明らかにしなかった。複数の外交筋によると同事務局長の病気の詳細はIAEA内部でタブーとなっていたが、公の場に姿を見せるたびに病状の悪化が見て取れた。

IAEAの22日の発表では、後任選出に関する時期については触れられていない。ただ、アルゼンチンのラファエル・グロッシIAEA大使が後任として立候補するほか、複数の外交筋によると、IAEA主任調整官であるルーマニアのコーネル・フェルタ氏が立候補すると見込まれている。その他にも立候補者が現れる可能性がある。誰が後任となっても、イラン問題などについて大きな政策変更はない見通しだ。

天野事務局長の病気を巡る情報が少ないことは、総じて、同事務局長のオフィスがセンシティブな情報をどう扱ってきたかを示している。

IAEA加盟国の外交官はしばしば、天野氏と同氏のスタッフからイラン核合意などを巡る機密情報が得られないことについて、私的な場で不満を漏らしていた。

しかし、天野氏はIAEAについて、本質的に政治的というよりもテクニカルな機関だと主張していた。

[ウィーン 22日 ロイター]


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