最新記事

米軍事

次期米国防長官代行は「中国脅威論者」 陸軍長官マーク・エスパーの横顔

2019年6月24日(月)11時00分

経歴には湾岸戦争とレイセオン

シャナハン氏に否定的だった人々は、安全保障政策の経験のなさと、防衛大手ボーイングの幹部だったことが利害の対立になりかねないと批判していた。

エスパー氏もまた、米防衛大手レイセオンで7年間、政府対応部門バイスプレジデントを務めたことに対し、懸念の声があがっている。

独立非営利団体の「プロジェクト・オン・ガバメント・オーバーサイト」のディレクター、マンディー・スミスバージャー氏は、「次期国防長官代行が元レイセオン幹部だということは喜びがたい」と語る。

しかしエスパー氏には、1986年に卒業した米陸軍士官学校にまでさかのぼる軍での豊富な経験がある。陸軍のホームページによると、1991年には 第101空挺師団の一員として湾岸戦争に参加。その後、欧州で空中機動ライフル部隊を率いた。国防総省での経験には、国防次官補代行も含まれる。

米政府関係者が、イランとの緊張を高めることが、中国とロシアを焦点に置く国家防衛戦略にどう影響を与えるかと頭を悩ませるタイミングで、エスパー氏は国防総省を率いることになる。

国防総省はここ数週間で、中東への増派を2回発表。派遣される兵士は総勢約2500人となる。

この数字は、エジプトからアフガニスタンまで、同地域に派遣されている7万人の米兵士と比較するとごくわずかだが、大幅な増派をすれば今度は中国とロシアに対応できなくなる、と専門家は指摘する。

与党・共和党を含めた議員らは、職を失うことを恐れず率直に発言できる、より力を持った正式な国防長官がいまだ指名されていないことを懸念している。

史上最も長い国防長官代行となったシャナハン氏は、トランプ大統領との意見の相違で突然辞任したマティス前国防長官の後任として起用された。

上院軍事委員会の委員長、共和党のジェームズ・インホフ上院議員は、エスパー氏に信頼を寄せる。「トランプ大統領は彼のことを買っているし、大統領は私も同意見だと知っている」

下院軍事委員会の委員長を務める民主党のアダム・スミス議員も好意的だ。

「エスパー氏は、何年も前に連邦議会のスタッフだったころや民間で働いていたときから知っている。国防総省が彼のリーダーシップから得られるものは多いだろう」

(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)

Phil Stewart

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ハーバードが学ぶ日本企業
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月30日号(9月24日発売)は「ハーバードが学ぶ日本企業」特集。トヨタ、楽天、総合商社、虎屋……名門経営大学院が日本企業を重視する理由

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、財政政策との連携強化で経済支援 長期金

ワールド

米政権、電子機器への関税検討 税率は半導体量に比例

ワールド

米、長射程トマホーク供与を検討 ウクライナ向け=副

ビジネス

スペイン信用格付け、大手3社がそろって引き上げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「逃げて」「吐き気が...」 キッチンで「不気味すぎる物体」を発見...投稿された写真にネット震撼
  • 4
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 5
    シャーロット王女の「視線」に宿るダイアナ妃の記憶.…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    マシンもジムも不要だった...鉄格子の中で甦った、失…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    国立西洋美術館「オルセー美術館所蔵 印象派―室内を…
  • 10
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中