最新記事

韓国事情

韓国で急増する外国人留学生、いっぽうで問題も顕著に

2019年6月4日(火)18時30分
佐々木和義

外国人留学生が最も多い高麗大学 撮影:佐々木和義

<近年、韓国で外国人留学生が急増してきたが、韓国語ができずに学業を放棄する留学生や就労を目的に入学する偽装留学が問題となっている>

韓国の大学で外国人留学生が急増し、いっぽうでさまざまな問題も顕著になってきている。2010年以降、年8万人台で推移していた留学生は2014年から増え始め14万人まで拡大したが、韓国語ができずに学業を放棄する留学生や就労を目的に入学する偽装留学が問題となっている。2016年に政府が行った調査では、不法滞留者に転落した外国人留学生数は1万人を超えていた。

少子化で経営が苦しくなった大学が積極的に受け入れ

韓国で外国人留学生が増えた背景に、少子化と製造業を中心とする韓国企業の海外移転がある。韓国人の大学進学者は、約50万2000人のピークに達した2010年以降、急速に減り始め、2015年には40万1000人まで減少した。わずか5年で新入学生が20%減少し、経営が苦しくなった大学が収入を補うため、外国人留学生を積極的に受け入れるようになったのだ。

留学生が多いほど良い学校とみなされる風潮も留学生の増加に一役買っている。外国人留学生が最も多いのはソウルの高麗(コリョ)大学で、数年前まで延世(ヨンセ)大学や慶煕(キョンヒ)大学に次ぐ3位だったが、積極的な留招致活動に取り組み、120か国から4800人の留学生を受け入れるようになった。学部生全体に占める外国人学生は10%を超えている。ほかにも延世大学、慶煕大学、成均館(ソンギュングァン)大学など名門と評される大学ほど留学生数が多い。

政府も留学生招致を後押し

政府も留学生招致を後押しする。教育部は2023年までに20万人の留学生を誘致する目標を掲げて、韓国語力のハードルを下げたのだ。韓国の大学に留学を希望する外国人は1級から最上6級まである韓国語能力試験(TOPIK)で3級以上の語学力が求められていたが、これを2級レベルまで引き下げた。

大学の授業についていくことができる語学力は5級以上というのが大方の見方である。高麗大学など韓国語が一定水準に達していない留学生に、言語教育を義務付ける学校もあるが、留学生本人に任せたまま放置する大学が少なくない。

そして、製造業の「脱韓国」化も留学生の増加に拍車をかける。東南アジアに進出した韓国企業の給与は現地企業より高いケースが多く、国よっては2倍から3倍だ。韓国留学の経験があると自国に進出した韓国企業への就職が有利になると期待する若者が増え、韓国企業の海外進出と比例するように留学生が増加した。

賃金水準が高くなった韓国を脱して中国に工場を移転する企業が続出したが、中国の賃金が上昇すると、今度は東南アジアに移転する企業が増え始めた。なかでもベトナムは6000社の韓国企業が進出しており、ベトナム人留学生は2012年の3200人から3万人近くまで急増した。中国人留学生は約5万7800人から約6万6000人に増えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン南部ブシェール原発付近に飛翔体着弾、被害なし

ビジネス

米国株式市場=続伸、旅行関連銘柄が高い FOMCに

ワールド

イラン、政権幹部ラリジャニ氏の死亡確認=メディア

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、主要中銀の金融政策決定控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 8
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中