最新記事

韓国事情

韓国で急増する外国人留学生、いっぽうで問題も顕著に

2019年6月4日(火)18時30分
佐々木和義

さらには、韓国の大学に留学を希望するベトナム人や中国人の増加に伴い不法ビジネスも登場した。現地に事務室を構えて就職希望者を募集し、留学生に偽装して入国させるのだ。斡旋業者はソウルの名門を避けて、地方大学の語学課程を紹介する。地方大学の語学院に入学するビザを得たベトナム人や中国人が、集団で消える事件が起きるようになった。

韓国の大学を卒業しても韓国企業に就職することは難しい

留学生の中には、優秀な学生も多い。高麗大メディア学部と淑明(スンミョン)女子大社会科学は、首席での卒業生は中国人とケニア人で、ほかにも留学生が最高成績を修めた事例は少なくない。

しかし、韓国企業が若い外国人を採用する事例はほとんどないために、韓国の大学を優秀な成績で卒業しても韓国企業に就職することは難しい。母国の韓国企業の待遇は地元大学を卒業した場合と変わらないのだ。海外に進出する日本企業などは、現地採用者を重用し、優秀なスタッフには重要なポストを与えるようになってきていると聞くが、在外韓国企業の場合、主要なポストは本社から派遣される韓国人が独占することが多い。

ソウルのある大学教授は外国人留学生とのこうした問題を、留学生を受け入れなければ収益が出ず、また政府の大学評価で国際指数を重く評価しているのが一因と述べた。また、別の教授は外国人留学生との葛藤が国家全体に対する先入観として定着しかねないと過剰な留学生の受け入れを批判する。

しかし本質的な問題は留学生の受け入れ数ではないのだろう。韓国の大学を卒業した一流人材が韓国企業に就職することは事実上不可能で、また学んでも韓国を出た後、韓国語を使う機会はほとんどないことも難しい条件だ。韓国の大学で学ぶメリットを構築することが、本質的な問題解決の道なのだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ前に物価目標到達を確信する必要=独連

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中