最新記事

中国

天安門事件30年の中国 「AI検閲」フル稼働で厳戒体制

2019年6月1日(土)10時30分

秘密の事実

習近平氏がインターネットの引き締めを強める中、情報の流れは共産党中央宣伝部と国営メディアのネットワークに集約されてきた。検閲担当者らは、これにより主要な政治ニュース、自然災害や外交を含む一部トピックの検閲にかかる負担は軽減されたと語る。

あるバイドゥの従業員は、「ニュースであれば、ルールは簡単だ。国営メディアが最初に報じたもの以外は公認の情報ではない。特に、指導者層や政治的な話題だ」と話し、「われわれは、1989年の詳細を含むキーワードの基本的なリストを渡されているが、それらは(AIが)難なく見つけることができる」と付け加えた。

コンテンツを適切に検閲できなかった場合の罰則は厳しい。

CACによると過去6週間で、網易(ネットイース)のニュースアプリ、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)<0700.HK>のニュースアプリの天天快報、そして新浪などの人気サービスが、数日から数週間にかけてサービス停止となった。期間中、これらのサービスはアプリストアに表示されず、オンラインでも閲覧ができなくなる。

センシティブな事柄についてオンラインで情報を広めたインターネットユーザーや活動家への罰則は、罰金から懲役刑までがある。

中国では、ソーシャルメディアのアカウントは本名と国民1人1人につけられた「公的身分番号」に紐づけられることが法で定められている。当局が求めれば、企業はユーザー情報を提出する法的義務がある。

インターネットユーザーのアンドリュー・フーさんは、「知っていることを共有してはいけないと理解するのが当たり前になった」と語る。「それらは秘密の事実だからだ」

北京で働くフ―さんは2015年、出身地の内モンゴル自治区で3日間拘留された。大気汚染についてのコメントを関係のない写真と合わせてウェイボ―に投稿したのだが、その写真は天安門事件をほのめかすものだったのだ。

当局とのこれ以上のトラブルを避けるために本名のフルネームは明かせないというフーさんは、休暇で実家にいる間に警察官が現れたときには驚いたが、怖くはなかったという。

「当局者らも、インターネットユーザーと同じくらい困惑している。実際の取り締まりが不規則であっても、圧力を強めることが簡単なやり方だと、彼らはわかっている」

(翻訳:宗えりか、編集:山口香子)

Cate Cadell

[北京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中