最新記事

北朝鮮

北朝鮮のミサイル実験でトランプがボルトンを否定、その意味は

No One Seems to Agree With Trump's North Korea Claims

2019年5月30日(木)14時30分
デービッド・ブレナン

モーガン・オルタガス報道官は、国務省の立場を明確にするよう求められたことを受けて、こう語った。「北朝鮮による(大量破壊兵器)計画全体が、国連安保理の決議に違反していると考える。だがアメリカとしては、北朝鮮の大量破壊兵器開発計画を平和裏に終わらせるための話し合いに努めている」

北朝鮮の実験に対する同省の見解がトランプと同じかどうか、本誌は国務省に確認を求めていたが、迅速な回答はなかった。

米シンクタンク「センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト」の朝鮮半島専門家ハリー・カジアニスも、「北朝鮮が最近の短距離ミサイル発射実験によって、国連安保理の決議に違反したことは間違いない」と言う。「トランプと韓国大統領府は、これらの実験の重要性を否定しようとしている。北朝鮮との協議再開の可能性を残しておくことがその狙いだ」と彼は本誌に語った。

強硬なアプローチは愚かな戦略

カジアニスは、5月上旬の発射実験は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にとって、自分を取り巻く軍や党指導部に対して、自らの決意を示すひとつの方法だったのだろうと指摘。北朝鮮との協議を続けていく上での真の障壁は、「制裁緩和に先立って、まずは北朝鮮が折れて核兵器とミサイルを放棄すべきだという、アメリカのきわめて非現実的な期待」だと示唆した。

これは、どの核保有国も同意しないであろう条件だ。「歴史を見れば分かることだ。そのような戦略は愚かで失敗する運命にあるし、両国が核戦争の瀬戸際までいった2017年の危険な日々に我々を引き戻すことになる」とカジアニスは警告した。

もしも本当に金との合意をまとめたいなら、トランプは好戦的な顧問たちを排除する必要があるかもしれない。「そうした動きによってのみ、トランプがやりたいと言っている『どぶさらい』が本当に可能になり、アメリカを戦争に導きかねない、中東や北朝鮮のような国への強硬なアプローチを縮小するプロセスに着手できる」とカジアニスは指摘している。

(翻訳:森美歩)

20190604cover-200.jpg
※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。

ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中