最新記事

選挙

インドネシア、現職ジョコ大統領再選 対立候補は「不正選挙」訴え緊張高まる

2019年5月21日(火)20時49分
大塚智彦(PanAsiaNews)

大衆デモにテロ警戒で首都は厳戒態勢

こうした選挙結果に対して不満をもつ人びとの存在によって、インドネシア各地では緊張が高まりつつある。

当初選管の正式結果が発表される予定だった5月22日には選管のあるジャカルタ中心部メンテン地区や選挙監視庁(Bawaslu)のある目抜き通りタムリン通り周辺で「選挙に不正があり、選挙結果は無効」と訴える大規模な大衆デモが計画されていた。

さらに国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」が5月に入ってからジャワ島を中心に「5月22日にジャカルタ中心部で爆弾テロ」を計画していたとの容疑でインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーを複数逮捕するとともに爆弾、起爆装置などを押収。それでも「依然としてテロの危険がある」と市民に注意を呼びかける治安当局は、20日から市内要所に完全武装の警察官、兵士を配置して厳重警戒態勢を取っている。

21日には大型ショッピングセンターやモール、キリスト教会などの宗教施設、さらに警察施設や政府要人の私邸などにも完全武装の兵士、警察官などが配置されるなど緊張感が高まっており、在ジャカルタ米大使館や日本大使館はそれぞれ在住あるいは旅行中の自国民に対し、デモなどの情報を伝えるとともに十分な注意を呼びかけている。

またジャカルタ市内では22日を休校にする学校が出たり、地方からジャカルタに向かう幹線道路の検問が厳しくなるなど、市民生活への影響も出ている。21日までにはプラボウォ支持者が乗ってジャカルタに向かっていたバスの中から火炎瓶が発見され、押収される事件も起きている。

戦術不透明のプラボウォ氏に緊張高まる

プラボウォ氏は市民に冷静な対応を呼びかけ、一時は「今回は憲法裁判所に不服を申し立てても所詮結果(前回の却下と)は同じなので行わない」と発言していた。

そうした法に基づく手続きをせずに今回の選挙結果を「不正があったために受けれ入れない」ということ批判することは理屈に反しており、「不服があるなら手続きに従うべき」という反発も高まっている。

20日には大衆抗議運動を呼びかけて「社会不安を扇動した」との容疑で警察に身柄を拘束された支持者幹部と面会するためプラボウォ氏が警察本部を訪問した。ところが一部報道でプラボウォ氏自身が扇動容疑で事情聴取の対象になっているとの情報が流れ、「事情聴取から身柄拘束か?」との不穏な未確認情報で一時緊迫する場面もあった。

今後は支持者やイスラム教急進派などのプラボウォ氏に賛同する勢力が自発的に抗議運動やデモを実施し、世論を高める戦術しかプラボウォ氏側に残された手段はないといえる。

そうした騒然とした雰囲気の中で突発的な衝突や、機に乗じたイスラムテロ組織による爆弾テロの危険も払拭されていない。

インドネシアは現在5月6日から約1カ月続くイスラム教の「ラマダン(断食)」の真っ最中。ジャカルタや地方大都市では市民は緊迫したラマダンの最中の22日を迎えようとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、3月は小幅上昇 1年後インフレ

ワールド

仏伊、イラン作戦関与航空機の基地使用など拒否 スペ

ワールド

米「数日が決定的局面」、イランは米企業への攻撃示唆

ワールド

米USTR代表「WTO脱退の準備ない」、貿易不均衡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 10
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中