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日本外交

日本のイメージを世界で改善している「パブリック・ディプロマシー」とは

2019年5月10日(金)17時00分
桒原 響子(未来工学研究所研究員)*東洋経済オンラインからの転載

安倍政権が、PDを重要政策に位置付けた背景には、アメリカを舞台に進行していた中国や韓国と日本との歴史や領土・主権の問題をめぐる批判合戦があった。日中および日韓の首脳会談も開催できない状況となっていたが、中韓両国は、日本の歴史修正主義が問題であるとし、国際社会に対して、安倍政権は国粋主義者だと宣伝に務めた。

アメリカ内の報道を見ても、例えばニューヨーク・タイムズは、2013年1月2日付の社説で「安倍首相は、性奴隷の問題を含む第二次世界大戦時代の日本の侵略の歴史と謝罪を書き換えようとする、極めて深刻な間違いを犯そうとしている」「右翼でナショナリストの安倍(首相)は、1995 年に植民地支配と侵略について謝罪した村山談話を新たな未来志向の談話に置き換えたいと述べている」などと、極めて厳しい表現で安倍首相批判を行った。

こうした批判が最も激しくなったのは、2013年12月に安倍首相が靖国神社参拝を行った時。直ちに、中国や韓国は激しく批判し、アメリカ政府からも「失望した」との声明が出された。安倍首相がモーニング姿で靖国神社を参拝する写真映像は大きな衝撃を与え、「ナショナリスト」のイメージを鮮明に映し出してしまったと考えられる。

政府がアメリカの出版社に直接抗議

日本のイメージ戦略の観点からしても大きな問題が続いた。2015年1月、日本政府は、アメリカの出版社マグロウヒルが発刊したアメリカの公立高校向け世界史教科書の「第二次世界大戦中に日本軍が約20万人の14~20歳の女性を連行し、慰安婦として徴用した」という記述に対して、総領事館を通じて同社に訂正を求めたのだ。

これ対しマグロウヒルは、慰安婦の歴史事実について学者の意見は一致しており、修正要求は受け入れないとし、アメリカ政府も「学問の自由を強く支持する」と述べたと報じられた。

このケースはPDの典型的な失敗例といっていいだろう。いかに日本が自国の考える「正しい姿」を発信することを試みても、そのやり方が単純な反論型であったり、「表現の自由」を基本的価値観におくアメリカにおいて、日本政府が表に立って権威ある出版社に対し記載の訂正を求めたりする行為は受け入れられるものではない。逆に日本のイメージを大きく悪化させることとなった。

最近の傾向としては、中国が歴史や領土問題をめぐる反日世論工作を、アメリカを始めとする国際社会において展開し、日中が全面対立する事例は減少している。

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