最新記事

極右

絵文字や自撮りのメッセージで結束狙う欧州極右勢力、分断に終止符か

2019年4月15日(月)10時15分

類は友を呼ぶか

投資家は、欧州議会選が行われる5月26日以降に政治的な不確実性が高まると予想している。今回は欧州議会の705議席(英国が予定通りEUを離脱できなければ751議席)が改選となる。

経済成長率の低さ、イスラム主義武装勢力による安全保障上の脅威、そして開放的なEU国境をまたいだ移民流入への反発といったことに対する不満のために、多くの加盟国では、欧州懐疑派のナショナリスト政党に対する支持が高まっている。

「規範に逆らってもいいのだという有権者の自信が高まっている」と欧州外交評議会(ECFR)の上級政策フェローであるスージー・デニソン氏は語る。「『反─』を掲げる勢力は、今のところ、EU支持派よりもはるかに士気が高い」

こうした勢力が勝利を収め、英国が予定通りにEUから離脱すれば、執行部である欧州委員会が起草したEU法のチェックと修正を主な役割としてきた、欧州議会内の諸政党による国家横断的な会派も再編されることになる。

サルビーニ氏が率いる反移民主義を掲げる「同盟」は、欧州議会での勢力をこれまでの4倍以上の27議席に伸ばすと予想されている。

ルペン氏の国民戦線(FN)や、オーストリアの連立与党としてシュトラッヘ党首が副首相の座を確保した自由党の躍進が予想される中で、これら政党が参加する会派「国家と自由の欧州(ENF)」は、現有37議席から61議席に勢力を拡大する可能性がある。

やはりイタリアで連立政権に参加しているサルビーニ氏は、カチンスキ氏など対立する会派に所属する政党の指導者とも手を組みたいと考えている。

サルビーニ氏とカチンスキ氏は1月にワルシャワで会談しており、ハンガリーのオルバン首相は、両者が連携することは、今年最も素晴らしい動きの1つであると称賛した。

1つの大きな政治グループを形成できれば、資金集めや支援獲得の機会も開ける。ジョージア大学で極右勢力を研究するキャス・マッド氏は、「彼らが手を組むことができれば、これまでよりはるかに大きなリソースを得ることになるだろう」と言う。

だが政策上の相違により、EUに対して批判的な政党が、少なくとも2つの会派に分かれたままとなる可能性は高い。1つはサルビーニ氏中心、もう1つはカチンスキ氏中心の会派だ。

サルビーニ氏はロシアのプーチン大統領に心酔しているが、カチンスキ氏はプーチン氏を批判している。両氏とも反移民を掲げるが、対応の仕方では対立している。イタリアはEUに対する純出資国だが、ポーランドは純受益国である。経済に関する見方は一致しない。

ロシアを脅威とみるデンマーク、フィンランド、スウェーデンの極右政党にとっても、サルビーニ氏やルペン氏の親ロシア姿勢は容認しがたい。

「それ(対ロ姿勢)は多くの国にとって非常に重要な側面だ」と、スウェーデン民主党のジミー・アケソン党首はロイターに語った。「そういった(極右統一)会派を結成しようという動きは成功しないだろう」

国レベルで競合する多くの政党にとっても、連携は難しいだろう。

オルバン氏は欧州議会における最大会派「欧州人民党(EPP)グループ」に残ることを選択したが、先月には同会派から除名されている。オルバン氏は欧州懐疑派による連立をあれほど称賛する一方で、欧州の有力政治家とも手を組んでいることで、他のポピュリスト政治家には欠けている主流派としての存在感を備えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

村田製の今期4割の営業増益予想、電池事業で前年に5

ビジネス

米資産運用会社の銀行投資巡る監督強化案、当局が採決

ビジネス

第1四半期の中国金消費、前年比5.94%増 安全資

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中