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元号

元号は天皇が決めるべきだ

2019年4月5日(金)18時00分
広岡裕児(在仏ジャーナリスト)

天皇85歳の誕生日を祝って皇居で行われた一般参賀(2018月12月23日)  Issei Kato-REUTERS

<なぜ万葉集なのか、なぜ国書なのか、なぜ閣議決定なのか......。「令和」の決め方にはいろいろ違和感がある>

新しい年号が「令和」に決まった。

発表の様子は、NHKの国際放送でも流され、フランスでもリアルタイムで見ることができた。ずいぶん便利になったものだ。個人的な話だが、日本史は小学校の頃から大好きで、縁あって大正時代を中心に天皇・皇室の研究をすることにもなり、いくつか本も上梓した。やはり気になって、まだ時差で夜明け前だったが、テレビの前に座った。

それにしても出典が万葉集だとは。和歌の魅力は大和言葉の美しさである。しかし元号は漢字が二文字で音読みするということは初めからわかっている。中国の故事にならった序文の部分ではなく、枕詞の「青丹よし」の青丹(あおに)とか訓読みの元号にするほど徹底するのならまだしも、現存する最古の漢詩集である懐風藻から大正天皇まで脈々とした漢詩の伝統もあるのになぜわざわざ和歌集からとってきたのだろうか。日本書紀、古事記万葉集だけが日本の古典ではない。

会見で「国書」といっていたが、総理大臣が言うとどうも外国に対する国の公式書簡のようだ。「和書」というべきだったのではないか。それから、「くにがら」という言葉をつかったが、現代日本の総理としてはつかうべきではない。「くにがら」は「国体」の訓読みであり、戦前、漢字の「国柄」も「国体」と全く同義語として使われていたからである。

総理が「伝統」を盛んに強調していたのも気になった。たしかに元号は1400年の歴史がある。しかし、今のような一世一元になったのは明治になってからである。

元号に王政復古になって領土と国民だけではなく時間をも天皇が統治するという意味をもたせた。

明治時代に作られた「伝統」

日本で初めての元号は、大化である。蘇我氏の支配を倒したクーデタの一環として孝徳天皇の即位にあわせて定められたのだが、一世一元ではなく大化6年に天皇に白雉が献上されたのを吉兆だとして改元された。そのあと中断(資料によってはいくつかの元号もある)ののち文武天皇のときに大宝が制定された。これもまた、律令の公布という政治の大改革にともなうものだった。文武天皇は即位後すでに5年たっていた。また4年後には慶雲に改元される。これ以来元号は綿々と続くが、代替わりの他に吉兆や天変地異などによって変わるもので、在位中の天皇とことさら結びつくものではなかった。

赤穂浪士が討ち入りした元禄15年、当時の江戸の庶民で東山天皇と結びつけた人はいなかっただろう。今日でも将軍綱吉は思い出せても当時の天皇が誰だったかを言い当てられる人はまずいない。しかし、明治15年の日本人はいまの天皇が即位してから15年目の年であることは、簡単に想起した。

明治時代に、悠久の日本の歴史文化は取捨選択され、修正されて、時には、西洋の風習をもとりいれた日本の「伝統」が生み出された。一世一元の元号もその一つである。

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