最新記事

アメリカ政治

トランプ、「国境封鎖」でメキシコを恫喝

Trump: Closing Border is 'Profit-Making Operation'

2019年4月1日(月)19時00分
クリス・モラン

3月29日、テキサス州エルパソで米当局の拘束下にある中央アメリカからの移民 Lucas Jackson-REUTERS

<国境を封鎖して不法移民や貿易赤字のもとになる輸入品が入ってこなくすればその分利益になるとトランプは言うが、アメリカ企業や労働者への影響は今度こそ大きなものになる>

ドナルド・トランプ米大統領は3月29日の午後の大半を、メキシコとの国境を近日中に閉鎖することに関するツイッターと発言に費やした。国境閉鎖をすればアメリカの利益になるというのがその理屈だ。

「メキシコは何か(対処を)しなければならなくなる。そうでなければ私が国境を閉鎖するまでだ」と、トランプは29日午後、フロリダ州で記者団に対して述べたと政治紙ヒルは伝えている。「メキシコとの間にあるような、長年にわたる赤字のことを考えれば、国境封鎖は利益を生む作戦になるだろう」

トランプは例によってアメリカの対メキシコ貿易赤字のことを持ち出した。だが貿易赤字は単に、メキシコがアメリカから輸入するよりも多くの品物をアメリカがメキシコから輸入していることを意味するに過ぎない。多くのエコノミストは、アメリカのほうが経済力がある一方で生産・労働コストはメキシコの方がずっと安いため、そうした貿易赤字はある意味あって当然のものだと考えている。

自国経済への悪影響には触れず

貿易赤字を減らすため、トランプは関税の導入を再三唱え、国際的な貿易協定から離脱したり見直したりしてきた。これらは企業が生産・調達を国内で行うことを奨励するための長期的な施策だった。

だが国境閉鎖をすれば貿易への影響は即座に出るし、メキシコとの関係を断つことはアメリカの企業や労働者にとって大きなマイナスの影響を与える可能性があると、一部のエコノミストは指摘する。

「国境閉鎖はアメリカ経済にとって災厄となるだろう」と、ウッドロー・ウィルソン国際研究センターメキシコ研究所のクリストファー・ウィルソン副所長はバズフィード・ニュースに対して述べている。1日あたり10億ドルを超える物品がメキシコとの国境を行き来しており、これがなくなればアメリカの雇用に大きな影響を及ぼすとウィルソンは指摘。「これを断つとなれば、全米の多くの工場が数日中にも組み立てラインを止めざるを得なくなり、メキシコ向けのトウモロコシや大豆は腐るに任され、アメリカとメキシコ両国の経済全般が混乱に突き落とされる」

トランプ大統領は3月29日、国境閉鎖(具体的にはメキシコとアメリカの間の通関手続地の閉鎖)により「大量のドラッグの流入を食い止める」ことになるとも述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中